ネコ(猫)とは、狭義にはネコ目(食肉目)- ネコ亜目- ネコ科- ネコ亜科- ネコ属に分類される小型哺乳類であるイエネコ(学名:Felis silvestris catus)の通称である。人間によくなつくためイヌと並ぶ代表的なペットとして世界中で広く飼われている。
より広義には、ヤマネコやネコ科動物全般を指すこともある(後述)。
ネコの起源は、ネズミを捕獲させる目的で飼われ始めた(狭義の)ヤマネコ(Felis silvestris)の家畜化であり、分類学上はヤマネコの1亜種とされる[1]。人によくなつくため、多くが愛玩用のペットとして飼育されている。本項ではこれについて解説する。
一方、広義の「ネコ」は、ネコ類(ネコ科動物)の一部、あるいはその全ての獣を指す包括的名称を指す。しばしば、家畜種の「イエネコ」に加えて広義のヤマネコ類を含む。特に学術用語としては、英語の「cat」と同様、トラやライオンなどといった大型種を含む全てのネコ科動物を指すことがある。
学名(ラテン語名)「Felis silvestris catus(仮名転写:フェーリス・シルウェストリス・カトゥス)」の語義は「猫、野生の、猫」である。これは、ヤマネコ「Felis silvestris」(野生の猫の意)の中の「猫という一群」との命名意図がある。
日本では、鳴き声の語呂合わせから2月22日が猫の日とされる[2][3]。
血液型はA・B・ABがあり、ABが希少である。
イエネコは、形態学的分析を主とする伝統的な生物学的知見によって、以前からリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)が原種とされてきた。 また、20世紀後半から発展した分子系統学等による新たな知見も、従来説を裏付ける形となった。 米英独等の国際チームによる2007年6月29日の『サイエンス』誌(電子版)への発表では、世界のイエネコ計979匹をサンプルとしたミトコンドリアDNAの解析結果により、イエネコの祖先は約13万1000年前(更新世末期〈アレレード期[en]〉)に中東の砂漠などに生息していたリビアヤマネコであることが判明した[4]。
愛玩用家畜として同じく一般的なイヌ(Canis lupus familiaris)に比して、ネコは飼育開始の時期が遅いが、これは家畜化の経緯の相違による。イヌは狩猟採集民に猟犬や番犬として必要とされ、早くから人の社会に組み込まれたが、ネコは、農耕の開始に伴い鼠害(ネズミの害)が深刻にならない限り有用性がなく、むしろ狩猟者としては競合相手ですらあった。その競合的捕食動物が人のパートナーとなり得たのは、穀物という「一定期間の保管を要する食害を受けやすい財産」を人類が保有するようになり、財産の番人としてのネコの役割が登場したことによる。また、伝染病を媒介する鼠を駆除することは、結果的に疫病の予防にもなった。さらに、記録媒体として紙など食害されやすい材料が現れると、これを守ることも期待された。日本へは、穀物倉庫の番人として渡来したと� �えられている[5]
農耕が開始され集落が出現した時期の中東周辺で、山野でネズミやノウサギを追っていたネコがネズミが数多く集まる穀物の貯蔵場所に現れ、棲みついたのが始まりと考えられている(リビアヤマネコの生息地と農耕文化圏が重なった地域で、複数回起こっていたと考えられる。「#人間との歴史」)。 穀物には手を出さず、それを食害する害獣、害虫のみを捕食することから、双方の利益が一致。穀物を守るネコは益獣として大切にされるようになり、やがて家畜化に繋がった。
初めて人に飼われたネコから現在のイエネコに直接血統が連続しているかは不明確。最古の飼育例は、キプロス島の約9,500年前の遺跡から見出される。 また、今日のイエネコの直接的・系統的起源は明らかではないが、紀元前3000年ごろの古代エジプトで固定化されたものと言われている。
なお、更に遡るとネコの祖先はミアキスという約6000万年前の中型肉食獣に遡る。ミアキスの特性に近いまま進化した種がネコであり、平原に出て集団狩猟を行うプロアイルルスを経て現在の姿に進化した種がイヌである。
[編集] 身体的特徴
[編集] 概要
体の大きさは現生するネコ科の他のほとんどの動物に比べて小さく、体重は2.5 - 7.5kgの範囲に収まるものが多いものの、大型のものでは、体長(頭胴長)75cm(比較資料:「長さの比較」)、尾長40cm、肩高35cmに達する。
樹上生の傾向が強く、また、待ち伏せ型捕食者の典型であるネコの特性は、様々な身体的特徴として見ることができる。非常に優れた平衡感覚に、柔軟性と瞬発力のきわめて高い体の構造、鋭い鉤爪(かぎづめ)や牙などであり、足音が非常に小さく、体臭が少ないことも挙げられる。 また、爪を自由に出し入れできることはその鋭さを常に保持できることを意味し、ほとんどのネコ科動物に共通する特徴である。長く追うことで疲弊させる、あるいは、組織的な罠によって追い詰める追跡型捕食者であるイヌ科動物とは対照的である。
吻部(眼窩下部から口先もしくは鼻先までの部位)が突出していない丸い頭部を持ち、正対視するのに有利な前面に眼窩(がんか)が開いている。このことはネコとヒトに共通の身体的特徴で、眼による感情表現が豊かであることも意味し、これがヒトがネコに対して抱く親近感の理由ではないかとも考えられている。
他のネコ科動物にも見られる「ゴロゴロ(purr)」と喉(のど)を振動させる音のメカニズムには複数の説があり、はっきりとしていない。この音は、親子間のコミュニケーションにも用いられる。(後述「#喉鳴らし」)
[編集] 年齢と寿命
ネコは1歳くらいになると子供をつくることが出来るようになる。5歳くらいで落ち着いた感じになり、7歳あたりから高齢と呼べるようになり、20歳超えはかなりの長寿とされる。ギネス認定記録は38歳。
屋外で暮らさなければならないネコと室内で飼われているネコの寿命には、歴然とした差がある。室内飼育のネコでは14~18歳くらいが寿命であるのに対し、野良ネコでは4~6歳くらいが寿命となる。[6]
[編集] 体の柔軟性
ネコの体は非常に柔軟性が高い。頭の周り以外は体のほぼすべての場所を自分で舐めることができる。関節が緩やかで、筋肉や靭帯も柔らかいためである。特に肩の関節は可動性が高く、鎖骨は退化して小さいながらも存在しており(犬や馬など鎖骨がない動物は前腕を内側に曲げ抱きつく所作がとれず木登りができない)、筋肉でつながっている。高い所から着地した場合の衝撃を吸収することに役立っている。
[編集] 瞬発力
瞬発力が高く、跳躍力にも長けている。跳躍力は、おおむね体高の5倍程度(約1.5m程度)の所に飛び上がることができる。持久力には欠けており、長時間追いかけるような狩りは行わない。走るスピードは最高でおおよそ時速50km弱と言われ[7]、瞬間的に最高速に達する代わりに長くは続かない。
[編集] 運動能力
待ち伏せ型の肉食獣であるネコは俊敏な運動能力をもっている。やって来た獲物をひと息に捕らえる瞬発力を持つ。 その運動能力にもかかわらず猫が自動車に轢かれることは多いが、それは運動能力の問題ではなく、想像を超える大きさの物体(自動車)に突然遭遇してしまったとき、判断力を失ってその場で体の動きを止めてしまうからであるとされるが異説もある(「#眼」を参照)。
ネコを逆さにして高い所から落としても、着地まである程度の距離さえあれば、上手に体をひねり、足から降り立つことができる。 平衡感覚をつかさどる三半規管の能力とは別に、ネコには小脳の視覚による優れた水平線検出能力が備わっており、これによって、どんなに振り回されて三半規管が失調した状態でも、空中で正しく上下を判断することができる。
なお、飼い猫の場合には運動不足を解消するためのキャットタワー(ネコタワー)が市販されている。
[編集] 被毛
被毛は品種により、さまざまな毛色や毛質のパターンを持つ。同品種でも多様な色彩や模様を持つ珍しい動物である。毛色や毛質の決定には遺伝子の働きに因るところが大きいことが分かっているが、遺伝子がどのように活性化、不活性化するかなど、不明な点も多い。毛色は子宮内の状態にも影響を受けるとも言われる。例えば、世界初のクローンネコ「Cc」の毛色は、遺伝子が全く同じにもかかわらず、クローン親のものと異なっていることが知られている。
毛色を司る遺伝子は、すでにいくつか解明されており、色を薄めるダイリュート遺伝子や、被毛に縞模様を描くタビー遺伝子などの存在が知られている。品種によっては、突然変異体の遺伝子や、伴性遺伝子の存在もあることから、生まれてくる子猫の毛色・毛質等をおおよそ判定することは可能であるが、不明な部分も多い。
以下に、現在解明されている主要な遺伝子を例示する。
優性 遺伝子 | 役割 | 対立(劣性) 遺伝子 | 役割 |
---|---|---|---|
A | アグーティ(縞模様) | a | ノン・アグーティ(単色) |
B | 黒 | b | 茶色(チョコレート) |
bl | 薄茶(シナモン) | ||
C | 単色(濃淡なし) | cb | セピア(バーミーズ) |
cs | ポインテッド(シャム模様) | ||
D | 濃暗色 | d | 淡明色(ダイリュート) |
I | 抑圧(銀化) | i | 基底に及ぶ色素沈着 |
L | 短毛 | l | 長毛 |
O | オレンジ(または伴性遺伝の赤) | o | 黒味を帯びた非赤色 |
S | 白の斑 | s | ソリッドカラー(体全体) |
T | 縞(マッカレルタビー) | ta | アビシニアン(ティックドタビー) |
tb | ブロッチド(クラシック)タビー | ||
W | 体全体が白 | w | 白以外 |
これらの遺伝子の組み合わせによって、複雑な模様を形作る。これら以外にも毛色を決定する遺伝子もあり、解明されていない遺伝子も多数存在する。
O遺伝子および対立遺伝子o遺伝子はX染色体上にあることが分かっており、このため両方の遺伝子を持つネコは通常メスであり、オスでは染色体異常(X染色体過剰、ヒトでいうクラインフェルター症候群相当)またはモザイク染色体のネコだけである。両方の遺伝子を持つネコはトーティシェル(いわゆる錆猫〈さびねこ〉)あるいはトーティ・アンド・ホワイト(いわゆる三毛猫)と呼ばれるが、これらのネコにオスネコが珍しいのは、染色体異常のネコが珍しいためである。
ノン・アグーティ遺伝子はタビー遺伝子よりも上位であるため、ノン・アグーティを2つ(aa)持つネコ(黒猫など)には通常、縞模様は見られない。タビー遺伝子を持つネコには、子猫のときなどにうっすらと縞模様が現れることがあり、ゴースト・マーキングと言われる。
cs遺伝子(サイアミーズ)は独特の遺伝子で、本来は色素の出現を抑える役割を持つが、温度が低いとその働きが抑制される。そのため、これを持つネコは温度の低い体の末端部(鼻、耳、足先など)のみに色素が出現し、シャムネコのようなポイント模様が現れる。温度が低い環境でも色素が出現し、色が濃くなる。
白毛を発現させる遺伝子のうちの『白色遺伝子』は全ての色に対して優性であるため、これを持つネコは他の遺伝子にかかわらず、白猫になる[文献2 1]。
[編集] 眼
顔の大きさの割に、かなり大きな眼を持っている。他の動物における子供の眼の大きさの比率に近く、これがネコを「可愛い」と思わせる一因にもなっている。視覚については、特に対象の動きを捉えることを得意とする。8m位の距離ならば人間の顔を識別することが可能である。[文献2 2] 20m以内のものであれば、じっと見ることによって距離感をかなり正確に測ることができる。
瞳孔は、人間と違い、縦に細長くなっている。瞬時に瞳孔の大きさを変えることに有利と見られている。野生状態で草むらのような縦長の視界で視覚を働かせるのに有利ともされる。瞳孔は調整の範囲が広く、明るい所では細長く、暗い所では目一杯開いて光の入る量を多くする。暗い所での視力は良い。時計が一般的でなかった時代、猫の眼の瞳孔の広さは時間帯によって変わるため、忍者が概略の現在時刻を知るのに活用したともいわれている。時間が真昼に近づけば近づくほど瞳孔の広さは狭くなり、逆に真夜中に近づくほど広くなる。
他の多くの夜行性動物と同様、ネコの眼には輝板(タペタム)と呼ばれる層が網膜の下に備わっている。この層が光を反射するため、入射光と反射光の両方の光が網膜を通過することになり、わずかな光でも物を見ることができる。この反射光のため、暗所で観察者側から照明を当てたとき眼が光って見えることがある。この現象はシカなどの野生動物でも同様であり、ライトで照らして光って見えた眼の数で個体数を割り出す「ライトセンサス」にも利用されている。なお、「ネコの眼が光を増幅する原理は暗視鏡(ナイトビジョン)に活用されている」と言われることがあるが、実際の暗視装置ではマイクロチャンネルプレートで電気的に増幅している。色については、光の三原色のうち青と緑と赤の全てを一応は認識できるが、赤� ��場合薄いピンク色にしか認識出来ない。基本的にはモノトーンの視界である[文献2 1]。 ネコが自動車に轢かれる事故が夜間に多いのは、車のライトを見てしまってショックで動きが止まるせいとも言われている(異説→「#運動能力」)。夜でもよく見えるネコの眼は非常に敏感で、ライトなどの強烈な光に弱く、真っ暗闇で突然フラッシュ撮影をしたりすると失明の危険がある。
哺乳類では退化している瞬膜が、わりと大きく、体調の悪い時等に眼球の前に出てくる事がある。
[編集] 眼の色
虹彩が大きな割合を占めており、人間でいう「白目」(球結膜)は通常見られない。ネコの眼の色、といった場合、虹彩の色を指す。眼の色は、色の濃淡などの違いがあるものの、おおむね以下の4種類に分けられる。
- カッパー(銅) - cf. 色名としては、en:Copper (color)。
- ヘーゼル(薄茶) - cf. 色としては、榛色に近い。
- 緑
- 青
青い眼は白猫とシャム系のネコ(ポイントのあるネコ)に多く、白猫の場合は高い割合で聴覚障害を持っている。白猫の場合はオッドアイと言われる、左右の眼の色が違う場合も多い。この場合、青い眼の側の耳に聴覚障害を抱えることがある。一方が黄色で、もう一方が黄味のない淡銀灰色/あるいは淡青色というオッドアイは、日本では『金目銀目(きんめぎんめ)』と呼ばれ、縁起が良いものとして珍重されてきた[文献1 2]。シャム系のネコの場合、立体視力に問題がある場合があるが、品種改良の結果、このようなネコは多くない。
これらの眼の色の違いは、虹彩におけるメラニン色素の量で決まり、色素が多い順にカッパー、ヘーゼル、緑、青となる。人間など他の哺乳類の眼でも同様である。色素の量の違いは、元々生息していた地域の日光量の違いに由来すると言われる(日光量が多い地域では色素が多くなる)が、交雑の結果、現在では地域による違いはほとんどなくなっている。シャムネコの青い眼は北アジア由来と言われ、熱帯のタイ原産のシャムネコであるが、先祖の眼の色に由来するという。
生まれて間もない子猫の場合、品種に関わらず、虹彩に色素が沈着していない場合が多く、青目に見えることが多い[8]。これを「キトゥン・ブルー」(Kitten Blue、「子猫の青」の意)という。生後7週間くらいから虹彩に色素がつき始め、徐々に本来の眼の色になっていく。
[編集] 鼻
鼻は、他の動物に比べてそれほど優れているわけでもないが、ヒトと比べれば数万から数十万倍と言われる嗅覚を持つ。体のバランスに比べて小さくできているが、鼻腔内部は凹凸に富み、大きな表面積を生み出しているため、小さな鼻の外観だけからは予想できない優れた嗅覚がある。 また、ネコの鼻は個体によって異なる紋様を持っている。これは「鼻紋」と呼ばれ、人でいうところの指紋と同じものであり、個体の識別の際に用いられる。
[編集] 鼻の使い方
イヌと違って嗅覚を狩りに利用することはほとんどない。イヌとネコの狩りの仕方の違いによる。ネコは、嗅覚を「これは食べられるものかどうか」ということと、縄張りの確認に主に使うと言われる。ネコは頬腺などから出る分泌物や尿などによって自分の臭いを付け、そこを縄張りとする。そのほかにも、仲間同士のコミュニケーションのために臭い付けをし、飼い主やほかのネコに対して行われる。例えば、ネコが飼い主の足に顔をすり寄せるのは、頬腺などから出る分泌物を付け、「自分の物」というマーキングをしているわけである。
[編集] フレーメン反応
フェロモンを感じる器官が口内の上顎にあり、ヤコブソン器官(鋤鼻〈じょび〉器官)という。フェロモンを感じると口を半開きにし、目を半分閉じて笑っているような表情をする。これをフレーメン反応といい、フェロモンを分析している行動である。これにより、主に相手のネコがどういう状態にあるかを分析する。
マタタビの果実やイヌハッカの匂いを嗅ぐと、ネコは恍惚として身悶えるような反応を示す。これは匂いに含まれるマタタビラクトンやネペタラクトンなどの物質にヤコブソン器官が反応し、ネコに陶酔感をもたらすためと言われている。これは、ネコ科全般の動物に起こる反応である。
[編集] 牙
猫の牙は生後2ヶ月~8ヶ月で乳歯の脇から永久歯が生え始め、やがて乳歯が抜け落ちる。
[編集] 耳
ネコの五感で最も優れているのは聴覚である。可聴周波数は60Hz - 65kHzとされ[9]、イヌの40Hz - 47kHz、ヒトの20Hz - 20kHz に比べて高音域に強い。これはネズミなどが発する高音に反応するよう適応したためと言われている。耳は片方ずつ別々に動かすことができ、異なる方向の音を聞き分けることができる。そのため、指向性が強く、音源の場所をかなり正確に特定することができる。音の聞き分けの能力も高く、例えば飼い主が帰ってきた足音を判別することは簡単にできる。これらの能力は、夜間に待ち伏せ型の狩りをするのに適応し発達したものと言われる。
[編集] 舌
舌は薄く締まっており、表の面には多数の鉤状突起があってザラザラしているが、これは骨に付いた肉をしゃぶりとるのに適応したものである。この突起は毛繕いや水を飲む際に役立つ。この特質と形状を模してパソコンのポインティング・スティックには猫の舌状のものが製品化されている[10]。
熱い食べ物が苦手な人を「猫舌」と俗称するが、ネコのみが特に熱いものを嫌うというわけではない。野生動物は全般的に加熱調理した食物を食べることがほとんどないので、熱いものに慣れていないためである。山火事などの後に屍肉を漁るくらいしか、熱を持った食物を口にする機会はない。
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ネコ科の動物に共通する特徴であるが、味蕾が他の哺乳類とは異なっており、甘味を認識することができない。 アメリカのMonell Chemical Senses CenterとイギリスのWaltham Centre for Pet Nutritionの両所の科学者達が行った研究において、 砂糖を含めた水と普通の水を数十匹のネコに与えたところ、どちらの水も同程度飲んだことが確認された。それ以前の研究で、ネコが砂糖に関心を持たないことは示されていた。彼らはネコのDNAを調べ、甘味を受容する器官を構成する二つのたんぱく質の内の一つであるT1R2に対応する遺伝子の欠陥により、その器官をもはや作ることができないことを見いだした。一匹のライオンと一匹のチーターのDNAでも同じ結果を確認した。また極端な肉食性が砂糖に対する味覚を無関係のものとし、甘味の受容器官に変異を生じさせることを許したということを提唱している[11]。猫のような肉食動物は、糖新生の酵素活性が高く、タンパク質から分解されて得られた糖原性アミノ酸から糖新生を行って体内で必要な糖分を生成している[12]。 アミノ酸に対する反応が強く、特に苦味を認識する味蕾は多くある。これはアミノ酸が腐敗したときの苦味を強く感じることによって、腐肉を食べることを避ける役割を担っていると考えられている。ネコの食物に対する嗜好は、これらの味蕾の構成の違いが要因の一つと考えられている。
[編集] ひげ
哺乳類のひげを専門用語では「洞毛」という。ネコのひげ(洞毛)は毛根部分に感覚神経や血管が密に分布しており、非常に鋭敏で、先端に何かが少し触れても感じ取れる。口の周りだけでなく、眼の上、顔の横にもあり、それらの先端を結ぶと顔を一周する大きな円になり、これで狭い通路を通り抜け得るか否かを判断できるので、獲物の追跡、敵からの逃走に重要な役割を果たす(ただし、一部に否定説あり)。顔以外では、前肢の関節付近の裏側にも生えている。前肢のひげ(洞毛)は、足元を見ずに障害物を越えるために役立っている、と考えられている。[要出典]長さは若いほど長く、歳をとったものほど短い。ひげは生え変わるが、無理矢理抜くと酷い場合はストレスで死んでしまうこともある。
[編集] 襟首
襟首(えりくび)と呼ばれる頸(首)の後ろの皮膜は痛点が鈍化しており、親猫が子猫を運ぶときここをくわえる。この特徴は成猫になっても残るため、成猫でもヒトがここをつかんで持ち上げることができる。持ち上げなくとも襟頸を掴むだけでおとなしくなる傾向があるため、気性の荒い猫や野良猫を扱う際に有効である。これは、母猫が危険を感じた時にしか使われない方法のため、猫は緊張して動きを止めていると考えられている。
母猫が子猫の襟首をくわえて持ち運ぶことがあるが、これはくわえても子猫に悪影響のない場所を母猫は本能的に知っているからできることであり、人間はその場所を知らないため、むやみに襟首を掴んで持ち上げると猫の頸を絞めてしまうことになりかねない。また、筋肉に悪い影響を与えるという説もあるので、襟首だけ掴んで成猫を持ち上げることは避けるほうがよい。
[編集] 尾
尾はおおむねその胴体ほどの長さであるが、ジャパニーズボブテイルやクリルアイランドボブテイルのように極端に短いものや、マンクスのように尾がない個体もある。尾の役割は、感情を表すほか、走行時や跳躍・着地の際に体のバランスを取る役割がある。イエネコについては尾がなくても行動にほとんど支障はないと考えられている。
従来の日本産のネコは、世界に現存するほとんどのネコに比べ、ジャパニーズボブテイルのように尾は半分以下もないことが普通であったが、戦後(太平洋戦争終了後)以来日本在来のネコに海外のネコの血統が混入し続けた結果、一部地域を除くほとんどの場所で尾の長い個体が大半を占めるようになっている。
長崎県を中心とした九州地方全域において、その尾が極端に曲がった個体の存在が報告されている。[13] 尾骨が極端に湾曲した個体は東南アジアの個体に顕著にみられる特徴であり、長崎県を中心とした尾曲がりネコは明治以前の出島交易時に東南アジアの個体が長崎に持ち込まれ混血した結果であると見られている。[14]
脊髄と直結しているため、非常に痛覚が強い。切断されると四肢を切断されるよりも痛がるほどである。よって、尾を持って引っ張ったりすると温厚な個体でも抵抗する。また猫の尻尾を強引に引っ張ると内臓に障害をおこしたり脊髄に損傷をおこし下肢(後ろ足等)に障害が発生することもある。
[編集] 尾による感情の表現
尾によって表す感情は以下のようなものである。
- 立てている
- 比較的機嫌の良いとき[15]。歩くときは立てていることが多い。個体によっては立てながらくねくねと動かしている場合もある。
- 横に振っている
- 早く大きく振っているときは不快なとき[15]。イヌから類推して「喜んでいる」とするのは誤解である。飼い主に呼ばれると軽く数回振って応えることもある[15]。また、狩りや遊びなどで興奮しているときも横に振ることがある。リラックスしているときも、ゆっくり大きく振ることがある[15]。
- 後肢の間に巻き込んでいる
- おびえているとき[15]。通常、耳を後ろに伏せていることを伴う[16]。
- 大きく膨らませている
- 威嚇しているとき、または、驚いたとき。威嚇しているときは全身の毛を逆立てることを伴う[17]。
- 他のネコや、人間に巻きつける
- 相手に親愛の情を持っている。
[編集] 攻撃手段
ネコが攻撃する際には、前足や後ろ足がよく用いられる。前足を前に差し出し、スナップを効かせて攻撃対象を招き寄せるかのように足裏で攻撃する攻撃方法は「猫パンチ」と呼ばれる[18]。また、前足で攻撃対象をしっかり抱き抱えて倒れこみ、後ろ両足で蹴りを繰り返して入れる攻撃方法は「猫キック」と呼ばれる[19]。いずれの場合も、自由に出し入れできる鉤爪を出して攻撃することで、より高い攻撃力が得られる。
噛み付きも、子猫同士の取っ組み合いなどでよく用いられる攻撃方法である[20]。攻撃対象をしっかり抱き抱えた状態で使われる「猫キック」と同時に用いることもある。
[編集] 指
ネコの指の数は、通常前肢が5本、後肢が4本であるが、多指症という奇形が頻繁に見られ、ヘミングウェイの猫のように後肢に5本、あるいは前肢に6本というようなネコも少なくない。前肢、後肢に各7本、合計28本の指を持つネコが「世界一指の多いネコ」としてギネスブックに記載されている。
[編集] 肛門嚢
不意打ちを食らうと、肛門嚢から臭いにおいを発することがある。
[編集] 鳴き声
日本ではネコの鳴き声は「ニャー」、「ミャー」などの擬音語を用いるのが一般的。アメリカでは「meow」、イギリスでは「miaow」、ドイツでは「miau」、フランスでは「miaou」、中国では「miāo(喵、wikt:en:喵)」と表す。
「ニャー」とは異なるものとしては、以下のようなものがある。
- 警戒時の唸り声。「フーッ」「ハーッ」「シャーッ」など。
- 発情期における、赤ちゃんのような独特の声。「オアーン」「オギャー」「アーウ」など。
- 鳥が目の前に来たとき、CDや鏡等の反射光に反応したとき、思うように獲物を捕れないなどストレスを感じたときに発する、「クラッキング」と呼ばれる声。まだ十分に解明されていない。「クケケケケ」「カカカカカ」など
カモメの鳴き声はしばしばネコのそれに喩えられ、英語では「mew」というネコの鳴き声を表す単語は「カモメ」という意味も持つ。日本語でもカモメの一種にウミネコ(海猫)と名付けられた鳥がいる。
ネコの鳴き声
[編集] 喉鳴らし
詳細は「喉鳴らし」を参照
ネコを含むネコ科動物は喉をゴロゴロと鳴らすことで知られている(ライオンやトラもである)。一般的には飼い主や懐いた人に愛撫されるなどリラックスしている時にこの反応が見られるが、体調が悪い時や出産時(陣痛中)、死ぬ直前にも喉を鳴らすという。これらの行動の意味は未だにはっきり解明されていないが、普段から低周波の音を発生させることで骨格を丈夫にする、苦しいときに痛みを緩和し呼吸を楽にしている、などの説が存在する[21]。
[編集] 知能
知能は哺乳類の中でも高い部類に属し、人間とのコミュニケーションもかなりできることが、イヌと並ぶ愛玩動物の地位を獲得した要因となっている。俗に「ネコは頭が良い、イヌは賢い」とよく言われるが、これは知能というよりも人間の都合からみた従順さである。またメインクーンなどに代表される、体長1m前後に達する大型種は、人間に従順で時にイヌのように振舞う。これは同祖であるイヌにも見られる傾向だが、大型種自体が少ないうえにイヌの種別間ほど顕著な体格差はないことから、一般、特に日本では大型種の存在とその性格についての認知度が低い。
種類および地域により差はあるが、だいたい春季ならびに夏季前期において発情、交尾を行うようである。 よく知られているように、オスはその際、「さかり声」と呼ばれるけたたましい鳴き声をあげる(あげない種類[要検証 ]もいる)。 この習性は、その声を騒音と感じて迷惑に思う人間も多く、飼い主との間で問題に発展することもある。
[編集] 発情
[編集] メスの発情
個体差もあるが、おおむね生後6ヶ月から12ヶ月で性的に成熟し、その後、定期的に発情する。発情の周期についてはいくつかの説がある。
- 周期はおおむね3ヶ月。完全室内飼育の場合など、周辺の環境によっては周期が早まることがある。
- 冬から春の始まりごろと、春の終わりごろから夏の終わりごろの2シーズン。一つのシーズンの間に数回発情する。
- 1 - 2月ごろ、5 - 6月ごろ、8 - 9月ごろに発情する。
発情期間は3 - 6日程度であるが、その間に交尾が行われない場合、10日ほどになることもある。
発情すると、地面や柱、時には人間の膝等に体をこすり付けるなど行動に変化が現れ、ときには意地でも外に出ようと暴れることもある。
[編集] オスの発情
メスよりやや2、3ヶ月程度遅れて成熟するが、これも個体差が大きい。定期的な発情期はなく、メスの発情に誘発されて発情する。
発情すると、スプレー(尿マーキング)と呼ばれる特徴的な行動を行うようになる。オス同士の喧嘩も多くなる。また、まれにメスでもスプレーをすることがある。
[編集] 交尾
交尾は両性の合意によって行われ、メスがオスを気に入らなければ、オスが無理に交尾をすることはないとされている[要出典]。通常、交尾はオスがメスの背中に乗り、オスがメスの首筋を噛んでメスが逃げないようにして行う。ネコの交尾は相手が1匹に限定されるものではなく、機会があればオス・メスともに複数の異性と行う。よって、同時に生まれた子猫の父猫が別のネコであることはよくあることである。ネコは交尾の刺激によって排卵が行われるため、妊娠率は比較的高い。オスの陰茎には棘(とげ)状の突起があることが知られているが、これは刺激によって排卵を誘発するため、と考えられている。去勢したオスではこの突起が消滅する。
[編集] 妊娠・出産
メスネコは、おおむね2 - 6匹程度の子を妊娠する。乳房は5対あるのが一般的。妊娠期間は60日程度である。
出産は一般的に軽く、人や獣医師が手を貸す必要のないケースがほとんどである。子猫は出産直後は羊水で濡れているが、母猫が舐めて乾かし、数時間でふわっとした毛並みになる。母猫は出産当日は授乳に専念し、食事はあまり摂らないようである。代わりに後産で出た胎盤を栄養分として食べることが多い。
メスネコは年3 - 4回の出産が可能であり、年2回の出産は珍しくない。授乳期間中であっても交尾・妊娠する。
ネコは肉食性である。生きた小獣(ネズミ、ウサギなど)・小鳥・小型爬虫類(ヘビ、トカゲなど)・小型両生類(カエルなど)・魚・小型節足動物(昆虫や蛛形類)といった小動物、または与えられた獣肉や、動物性の人工飼料を摂食する。
また、ネコは燕麦など背の低い草を食べる習性がある。理由は未だ明らかでないが、毛繕いのときにどうしても呑み込んでしまって蓄積した体毛を、草の繊維に引っかけて、まとめて排泄するためとする説や、植物性のビタミンや葉酸を草から直接摂取しているなどの説がある。どのネコにも共通しているのが、イネ科植物を好んで食べるということである。ペットショップでは飼い猫用に「猫草」として種や栽培キットなどが売られている。
与えればドッグフードも食べないことは無いが、ネコにとっての必須栄養素であるタウリンはドッグフードにはあまり多く配合されていない。タウリンの安定な摂取が望めない場合には、獣医と相談し、タウリンを含有する猫用栄養補給剤を処方、猫に服用させる必要がある。
[編集] ネコに与えてはいけない食べ物
- ユリ・タマネギ等のユリ科の植物
-
詳細は「タマネギ中毒」を参照
ネコやイヌにとってネギやタマネギ、ニンニク、ラッキョウなどといったユリ科の植物は極めて有毒とされている。また、ユリ属の植物は特に有害であり、全ての部位に毒性があり、体毛に付着した花粉を舐めただけで死亡した例も報告されている。アメリカの愛猫団体であるCFAは、これらの植物をネコに近づけないように勧告している。ハンバーグなどの練り製品、人間用のビーフジャーキー、すき焼き(の肉)、牛丼や茶碗蒸し、カップ麺などにも含まれることがある。 - アルカロイド類
- アルカロイドを含む多くの植物は中毒の原因となる。また、種子類・球根は全て有害と考えられている。カフェインを含む、コーヒーや紅茶等も有害とされている。
- イカ、タコ、エビ、カニ、貝等の一部の魚介類
- イカなどに含まれる酵素であるチアミナーゼ(サイアミナーゼ)はビタミンB1を破壊するため、長期にわたって摂取した場合、背骨の変形を引き起こすなどし、寿命も短縮される。これが「イカを食べると腰を抜かす」と言われる所以である。チアミナーゼは、イカ・タコ・貝類といった軟体動物のほか、エビ・カニなど甲殻類やコイ・ワカサギなどの淡水魚にも含まれている。しかし、チアミナーゼは熱によって失活するため加熱すれば問題はなく、イカ・タコなどはネコにとっての必須栄養素であるタウリンを豊富に含むため、ネコには好まれ、イカ入りのキャットフードも存在する。ただし、イカ・タコなどは消化があまりよくないため、多量に摂取すると消化不良を起こす。また、乾物であるスルメなどは、多くの水分を奪う可� ��性がある。(パック包装などを施された湿り気のある商品はこれに当たらない)[脚注 2]。
- なお、魚には基本的にビタミンB1が含まれていないため、肉を与えず魚だけで育てた場合も、寿命が短縮する。市販のキャットフードなどはビタミンB1を添加してあるため、魚が主原料であっても気にする必要はない。
- アワビ、サザエ、ノリ
- 死亡する危険はないが、アワビやサザエ、ノリを食べさせると耳が腐れ落ちると言われる。アワビやサザエは餌としている海藻に含まれるクロロフィルが、動物の体内に摂り込まれた状態で日光に当たると化学変化を起こしてピロフェオホルバイド a という毒成分に変質することに基づいている。アワビなどはクロロフィルを内臓に溜め込んでいるので、これを食べると成分も体内に入る。ネコの体は被毛で覆われているため、たとえ日に当たっても光は皮膚までは届かず問題ない。しかし、耳だけは被毛が薄く、毛細血管にまで日光が届く。そのため、化学変化で毒成分が造られ、炎症を起こして激しい痒みを生じる。ネコは耳を激しく掻きむしり、取れるまでそれを続けてしまう。あるいは、毒成分によって耳の組織が壊死してしまい、取れてしまう[23]。味ノリなどは匂いだけで食べさせろとせがむことが多く、また好んで食べるが、耳だれや目やにが出るので与えるべきではない。
- 家庭薬等
- グルクロン酸抱合能力が低いことなど、ヒトとネコの違いゆえに、風邪薬[脚注 3]に代表される(ヒトでは問題ない)家庭薬や、エチレングリコール[脚注 4]、ミノキシジル[脚注 5]、α-リポ酸[脚注 6]など身近な薬品での中毒事故が起こりうる。
- カカオ、チョコレート
- カカオに含まれるテオブロミンもネコは代謝できないため、チョコレートを与えてはいけない。大量に与えたり、長期にわたって与え続けると、腎臓や肝臓に障害の出るチョコレート中毒になる。
- カフェイン
- コーヒー、紅茶、緑茶、栄養ドリンクなどに含まれるカフェインはテオブロミンと似たような中毒症状を起こす。
- アルコール
- 血液中に吸収されたアルコールが許容量を超えると、脳や体の細胞を破壊する。そのことから、嘔吐、下痢、神経症状、呼吸困難、ふるえ、昏睡状態に陥る場合がある。最悪の場合は死に至る。
- 塩分[要出典]
- 塩分は生体機能を維持するために必要であるが、腎機能がヒトに比べて劣っているため、ヒトの適量では多すぎる。
- にぼし、かつおぶし
- にぼしやかつおぶしにはリンやマグネシウムが含まれており、膀胱や尿道に詰まる結晶や結石を起こす原因となる。
- その他
- 「子猫にミルク」は定番のイメージがあるが、これが通じるのはあくまで子猫だけである。猫の母乳にはそもそも牛乳以上の乳糖が含まれており、子猫にとって乳糖は貴重な栄養源である。しかし、成長したネコは乳糖を代謝できないため、牛乳や乳児用の粉ミルクを与えると下痢をする。
ヒト及びネコが罹患する病気を挙げる。詳細は各項に詳しい。
ドワーフのウサギは何を食べるか
- 人獣共通感染症
- ネコから人に伝染する病気には、トキソプラズマ症、パスツレラ症、および、バルトネラ菌の感染症である猫ひっかき病がある。
- 猫に特有の感染症
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- 猫免疫不全ウイルス(FIV)感染を原因とする感染症。特別な治療法は無い。
- 猫後天性免疫不全症候群(猫エイズ)は上記感染症の病態のひとつ。
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- 猫白血病ウイルス (FeLV) を原因とする感染症。
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- 猫伝染性腹膜炎ウイルス(FIPV)を原因とする感染症。
[編集] 睡眠
家ネコの睡眠時間は人間に比べて長い。ネコの語源が「寝子」であるという説もある。一般的に、ネコは一日の大半を寝て過ごすと言われている。ネコの飼い方の本(獣医師による解説)などでは、一般に「14時間程度」とか「16時間程度」と解説されていることが多い。また「長いネコでは20時間程度眠る」といった解説も多い[25]。外からの訪問者が少ない住宅で、家族や近隣にかわいがられ、餌が十分に与えられている安心できる環境だと、ネコは長いものでは1日あたり20時間ほどひたすら眠り続ける。ペットとして飼われているネコは餌を探しにいく必要がなく、安全な寝場所も確保されており、特に何をする必要もないため安心して眠り続ける。寝ている時に時折、痙攣したり鳴き声を漏らしたりするが、夢を見ているせいである。主に子猫の頃の夢(母猫の乳首を吸っている場面)や、狩りをしているときの夢を見ると言われている。
子猫(家ネコの子猫)は、平均的に睡眠時間が長く、ネコの飼い方の本などでは「20時間程度眠る」と解説されていることが多い。ほとんど眠っていて、たまに眼を覚ますと母猫のお乳を吸い、その後ちょっと遊んでいたかと思うと、またすぐ眠ってしまう、というような状態である。また、子猫ではほとんどがレム睡眠であると言われている。そのため、呼びかけたり触れたりすると目を醒ます場合がある。
野良猫に限れば、睡眠時間は家ネコよりかなり短めになる。眠っている時も眠りが浅い傾向がある。ネコに限らず動物全般に、外敵がいつやってくるか分からない環境では安心して眠っているわけにはいかず、眠りが短く、浅くなる。
日光東照宮の眠り猫は頭を地面につけず上げているが、その姿の時こそ熟睡している事が、研究により明らかになっている。
腹部を地に付け、四肢をたたみ、尾を身体側に引き付けたうえで、背を丸めてうずくまる、という猫の姿勢を『香箱(こうばこ)を作る』と表現する。香箱の蓋の丸く盛り上がった甲の形に由来している。[文献1 3] 前足・後ろ足ともに折り畳んだような姿勢なので、一見外敵が襲ってきてもとっさに対処できないように見えるが、実は身体に隠れて見えない後脚の足裏はきちんと地面に接地していて、危険があればすぐに飛び上がって逃げ出すことができる。
[編集] 爪とぎ
放し飼いの地域猫や野良猫の場合は太い木の幹で、飼い猫の場合は壁や柱を使って爪研ぎをする。ネコに限らず、狩りをする動物の多くに見られる行動である。
古い爪を研いで鋭くし、いつでも狩りに使えるようにしておく手入れの意味、縄張りを示す意味があると言われている。転位行動として行うこともある。
習性としての爪研ぎを防止する目的で爪を切ってしまう場合があるが、ネコの爪の根元部分は肉・神経・血管が通っており、先端部分だけを丁寧に切らなければならない。大変割れやすく、出血・苦痛を伴う場合がある。
なお、ネコの爪研ぎの習性は爪がないネコでも同じ仕草をすることがあり、何かを始める際の合図とも言われている。ちなみに人に爪を立てることがあるが動くとさらに食い込む為動かず離すのを待つほうが良い。
家庭で飼っているネコの場合、爪磨きの付属したキャットタワー(ネコタワー)があればそれで爪とぎさせるか、代替の爪とぎしてもよい壁を用意しておくとよい。また、ネコに爪とぎする場所も教えておく必要がある。
[編集] 体を舐める
いわゆる毛繕い。全身をくまなく舐める事により空気層を作り保温、唾液により体温低下、清潔になる。舌の届かない部位(顔・首・頭など)については前足に唾液を含ませて拭くように動かす。また、足を舐める際に爪を噛んで引っ張ったりもする。
鳥類や毛皮を持つ哺乳類においては、皮膚から毛皮や羽根に皮脂を分泌し毛繕いすることによって口からビタミンDを摂取しているとの説もある[24]。
[編集] 水を舐める
乾燥した地域を進化上の故郷とすると思われるネコ科は元来、飲水量が少ない動物で、体内で水を有効に使うために尿の濃縮率が高く、濃い尿を出す。そのため、腎臓への負荷が高く、ネコの病気の7- 8割は腎臓の病気である。特に塩分の摂りすぎには注意が必要である。また、水は水道水が最も理想的(日本のほとんどの地域では、水道水はミネラル含有量が少ない軟水)であり、ミネラルウォーターは極力飲ませないようにするべきである。
[編集] 顔を物にこすりつける
フェロモンを物に着け、自分の縄張りをアピールする。飼い主など、人に対して行われる場合は、親愛の情を示す意味や、餌などをねだる意味があると言われる。
[編集] 獲物を持ち帰る
ネズミやスズメなどの獲物を捕まえた際、その場で食べずに安全な場所まで運んでから食べる習性がある。母猫の場合は子猫に獲物を与えることで何が食べられるのかを教える。特に生きたまま与えることで狩りの訓練をさせるという側面がある。飼い猫や地域猫の場合も、よく懐いた人の元に獲物を持ち帰ったところを発見されることがある。
ネコが獲物を持ち帰る行動は、大抵の場合は飼い主を驚かす。獲物を持って帰る理由は定かではない。狩り下手の飼い主に餌を分け与えているつもりだとも、よく懐いた人間を家族と見なしているゆえの行動かもしれないと推測されている[誰?]。前述のようにネコは家族に餌を運ぶ習性がある。したがって、持ちかえった「成果」を無下に捨ててしまうことは、ネコにショックを与えてストレスを溜めさせうる[要検証 ]。
[編集] 蛇を食べる
野生に近いネコはヘビを捕食する能力がある。基本的にヘビより敏捷であるため、咬まれるケースはほとんどなく、また、ヘビの毒に対する耐性も強い[要検証 ]。日本猫の場合、成猫がマムシの毒で死ぬことはなく、獲物を家屋に生きたまま持ち帰るケースも見受けられる[いつ?]。
ただし、敏捷性や毒への耐性はネコによって個体差がある。
[編集] 見つめる
危険を感じると一目散に逃げ出すが、そのまま逃げ切らずに安全な間合いになったら一度立ち止まり、振り向いて様子をじっと観察する習性がある。相手と目が合うと、自分から目線を外そうとせずにらみ合いになる。ネコ同士でにらみ合いになると喧嘩の原因になることがあり、外猫を飼っている場合は家で人間と目を合わせる癖がつくと他の外猫と目を合わせるようになり喧嘩の原因を作ることにもなるので、癖をつけない方がよいともされている[誰?]。
[編集] 相手に向かって両目を閉じる
親愛の情を持っている相手と目が合うと、両目を閉じることがある。ときに、そっぽを向く行為を伴う。ネコにとって目を合わせる行為は敵意を意味するので、これは逆に友好をアピールしていると言える。
ネコの習性をよく知らない人間から見ると無視されたように感じる仕草であるが、実際には両目でウインクしているようなものと思えば分かりやすい。猫に慣れた人は見知らぬ猫に近づくとき、この性質を利用して、自らの目を閉じて猫を警戒させないようにする(この場合、視線は猫の目の高さまで落とすこと)。
[編集] 愛情があるのに噛む
親猫は子猫の頸(くび)の付け根をくわえて携行し、ネコはその場所を噛まれるとおとなしくなる(このことを利用して交尾の際にオスがメスを噛んだりする)。
これとは別に飼い主や他のネコを突然噛むことがある。これは手のような接触手段を持たない動物によく見られる習性であり、ふざけているに過ぎない。 しかしネコの歯はイヌより鋭くかなり痛く感じる。 また、驚いて反射的に手を引くと怪我をしてしまう。 しかしネコは、噛んでも相手が反撃しないのを確認して自分に対する愛情を確かめている[要出典]のである。「痛い」と口に出したり、軽く小突いて痛かったことを伝えると、徐々に甘噛みを覚えていく。 躾けようと思って叩いたり、必要以上に大声で叱責すると、自分に対する愛情を疑うようになり、すねてしまったり、その日を境に寄って来なくなったりする。
[編集] 母親の乳房に見立てて吸い付く
幼いうちに母猫と引き離された場合など、毛布や飼い主の唇、自分の尻尾の先などを母猫の乳房に見立てて吸い付くことがある。両前足を周囲を揉むように動かす。うっとりとした表情をし、放っておくと30分くらい続ける場合もある。その動きから、英語では「ウールサッキング」などとも呼ばれる。
[編集] 柔らかいものをマッサージするように踏む
別名ミルキング。乳の出をよくするために、子猫自ら母猫の乳をもむことがある。授乳期を過ぎても、甘えたい気分になると、その時の名残で柔らかいものを揉むことがある。また、揉むものが無くても、前足を握ったり、握りを開放したりを繰り返したりもする。
[編集] トイレの所作
ネコの最も象徴的な行動で、「ねこばば」の語源にもなっている。用を足す前に砂を掘ってくぼみを作り、用を足した後、砂をかける。初めのうちどこがトイレか認識できない場合があるが、そういったときはネコの様子を見て催しているなと思ったら、すばやくトイレに移してやり、用が済んだら大げさに褒めてやることが大事である。躾(しつけ)をすることでネコも人間用のトイレを使用させることができる。しかし、年をとるとトイレにのぼることがつらくなるので、人間用のいわゆる水洗トイレではなく、猫砂を用いた猫用トイレを使用させた方が良い。
[編集] 臭い物に砂をかける仕草をする
用を足す場合でなくても、臭い物を見つけたとき、実際に砂がなくても砂をかける仕草をする。
[編集] マーキング目的以外のスプレー行為
猫は不安が募ると、性別や避妊手術の有無関係なく、スプレー行為をすることがある。ストレスを感じる際に、スプレー行為により自分の匂いを強く嗅ぎ、安心しようとするため。
[編集] 喧嘩
長い口喧嘩を経てから、格闘になる。口喧嘩は、一方が低音で唸ると他方は高音で返すなどの特徴が窺える。通常は1対1の喧嘩であるため、人間が喧嘩の声に似せて横槍を入れると、気味悪がって喧嘩を中止することもある。喧嘩・格闘は、跳びかかりやすく有利な高所を制した側が優勢で、そのため、戦略的ポジションを探りながらの口喧嘩が長時間続く。格闘になるとほんの数秒で決着する。多くの場合、相手に痛手を負わすまでの闘いになるまでに勝敗が決する。
[編集] 身を低くして走る/歩く
見つかられないように移動するために身を低くする。警戒している状態が頻繁な野良猫では良く見られる。安心した環境で暮す飼い猫でも、苦手な人間との接触を避けるためにこのような行動をとることがある。
[編集] 斜め歩き
体と尻尾をアーチ状にして、斜めに歩くのは、攻撃態勢と防御体勢の両方に入っている常態。不安もあるが、一戦交えても構わない精神状態。喧嘩ごっこの時に斜め歩きをする場合もある。
[編集] 2種類のテリトリー
猫にはホームテリトリー(もしくはプライベートテリトリー)と呼ばれる半径500mのテリトリーがある。ホームテリトリーは同居している猫以外は侵入を許されない。反対に、半径250mのハンティングテリトリーと呼ばれる狩をするテリトリーは他の猫と共有可能である。
[編集] ギャラリー
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眠る 安全な環境と餌に満たされている家ネコはよく眠る。写真はペット用のベッドで体を寄せ合って眠る3匹のネコたち。
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丸くなって身を守るように眠るのがネコの典型的なスタイルの一つ。明るい日中など、この写真のように前足でまぶたに覆いをし、光を遮って眠るネコも多い。
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周囲を警戒する必要がないと、体を長く伸ばしてひっくり返ったような姿勢で眠るものもいる。写真は周りを信頼している子猫たち。
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腹を上にして寝る猫。一部の猫愛好家からへそ天と呼ばれる寝方。
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PCのキーボード周辺を好むネコは多い。PCの排熱で暖かいことが多い上、PCに向かってすごす飼い主に構ってもらいたい心理もはたらくのであろう。
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座る 野良猫の「箱座り」。眼を閉じていながら、耳を頻繁に動かし、周囲を警戒し続けている。
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納まる
箱や袋などに入ったり、家具の後ろや下に隠れたり、狭い場所を好む。 -
研ぐ
樹上生動物としても鋭い鉤爪は欠かせない。 -
舐める
直接舐められない所は(例えば自分の耳など)、いったん前足に唾液を含ませておいて、その湿った前足でなでる。写真は前足を舐めている様子。 -
トイレ
通常は砂地状の所にする習性があるが、よく訓練されたネコは人間用のトイレで用を足すこともできる。 -
争う
けんかの時は、けんか相手に対し体を横向きにして背中を湾曲させ、体毛を逆立ててふくらませ、体格を大きく見せて威嚇する。 -
遊ぶ
仲間とじゃれることは狩りの訓練も兼ねる。隠れ場所や寝場所として駐車場を好むものも多い。 -
見つめる
一定の距離を取り警戒している。 -
群れる
猫は群れを作る習性がないが、餌場など特定の場所に集まることもある。
[編集] 自然生態系への影響
現代においてほぼ世界中に存在するイエネコであるが、これは人為的に広まったのであり、それぞれの地域の生態系にとっては外来種である。
イエネコは優秀なハンターとしての能力と本能を持っている。非常に狩りを好む気性は欲求と言っても差支えないぐらいである。古来、人に飼われてきた理由もネズミ等の駆除能力によるところが大きかった。野生化したネコはもちろん、十分に餌を与えられている飼い猫も野外の鳥類や小型哺乳類、爬虫類、両生類などの小動物を捕殺してしまう。そのことが生態系に深刻な影響を与えてしまうこともある。
日本での代表的な例としては、沖縄県において、野生化したイエネコが地域固有種のヤンバルクイナを捕食したり、鹿児島県の奄美大島においてアマミノクロウサギが捕食されるケースがある。また、これまでのモニタリングでは検出されていないが、イリオモテヤマネコとの交雑や猫エイズの感染なども懸念されている。
人間に飼われ十分に餌を与えられているイエネコでも狩りを行うことはよく知られており、飼い主が居住する地域によってはやはり、生態系に影響を及ぼすケースがある。例を挙げれば、ニュージーランドのスティーブンズ島における固有種スティーブンイワサザイは、灯台守が飼育していた1匹のイエネコによって絶滅に追い込まれたと見られている。ただし、スティーブンイワサザイはイエネコが駆逐した15羽しか確認されなかった。
一方でイエネコの極端な減少がネズミの被害を拡大するケースも多い。東京都心部では年々ネズミ被害が増大しているが、これらは大規模な住宅街の歴史を持たずイエネコがほとんど出没しない、新宿や渋谷、原宿と言った、山手線西部の繁華街で顕著である。一方、下町として住宅が混在し、イエネコが出没する上野や、浅草では皆無ではなく増加傾向にはあるものの前者ほど顕著な被害はでていない。
イエネコは国際自然保護連合がリストアップした「世界の侵略的外来種ワースト100」にもランクインしており、固有種の多い地域では戸外に出さない必要がある。ましてや、脱走や飼育放棄など野生化につながるような事態は絶対に避けるべきである。
兄弟は何ですか
[編集] その他・雑学
- オスの三毛猫はほとんどいない
- 遺伝上、三毛猫のほとんど全てがメス猫である。ところがごくまれ(3万分の1の確率とも)にオスの三毛猫が生まれる。(詳細は被毛を参照)オスの三毛猫は、海運業や漁業関係者から、海での危難を救う力があると江戸時代から信じられており、最近まで高値で取引されることもあったという。
- 猫の死に場所
- 死を悟ると死に場所を求めて姿を消すと言われるが、実際にはネコには「死」という抽象的概念を認識することは出来ないと考えられる。体調が悪化したり、致命的な傷を負ったときなどは、本能的な防御反応として危険な場所から移動して安全な場所に身を隠そうとし、場合によってはそのまま死んでしまうと考えられている。しかし、飼い主への依存度の高いネコの場合、心細くなって主の近くに寄ってくる、あるいは、近くにいてくれるよう求め、結果的に飼い主の目の前で死ぬことになる。
- 弱った猫の姿を見かけない理由
- 一般に猫は自分の弱った姿を飼い主や仲間に見せることはない。これは本能的に猫は弱った姿を見せると仲間からいじめられることを知っており、死に場所にたどりつくまで元気な姿を演じるからである。したがって人間は街中で弱りきった猫の姿を見る機会は少なくなる[文献2 3]。
- 猫は家に付く
- 「犬は人に付き、猫は家に付く」これはイヌとネコの性質を表す上で最も分かりやすい例えである。
- 飼い主がペットを置き去りにして転居したとする。両者とも初めのうちは飼い主の帰りを待つが、一定の期間が過ぎるとイヌは飼い主を探すためその場を離れるのに対し、ネコは今までと変わらずテリトリー内で平然と暮らし続ける。 このような性質のため、ネコはイヌに比べて環境の変化に敏感であり、転居の際には十分に気を遣わなければならない。 猫を置き去りにすれば、たいていの場合野良猫として暮らすしかなく、環境にもよるが平均余命は極めて短くなる。
- 引っ越しをする際、連れていこうとすると嫌がることから、「猫は家に付く」と言われ、そのまま置いてけぼりにされることがあるが、実際には単に「引っ越し」の概念を理解できず、テリトリーを離れることに不安を持っているだけである。元々捨て猫だった場合など、再度捨てられる不安から泣きわめく場合もある。無理やりにでも新居に連れていってやれば、家具についた匂いや飼い主がそこで暮らしていることを確認して、自分の新しい居場所であることを理解し、何の問題もなく飼い主と暮らす。
- 猫水
- 日本の住宅街では、水の入ったペットボトルが通り沿いに並べてあるのを見ることがある。これは、ネコが塀の上を歩くのを妨害するために置かれていたものが形骸化したものとされ、俗に「猫水」と呼ばれている。[要出典]放し飼い(ノラ)ネコのマーキングやトイレに困っている民家の住人などがプランター(植栽)や塀ぎわなどに並べてある場合もある。こちらは「水に反射した光をネコが嫌う」「ネコはきれいな水のそばでトイレしない」との解釈によるものであるが、あまり根拠はない。実際にペットボトルにはいった水を嫌うようなネコは少なく、設置しても初めの数分警戒するだけで、その後は全く気にしないことが多い(ペットボトルに対し不快な経験があればこの限りではない)。猫のような大脳の発達した動物は学習能力に優れ、このような単純な反射行動を反復し続けることはない。猫水はあまり意味がないばかりでなく場所によっては収� �ん火災の危険を孕んでいる。
[編集] 猫と文化
[編集] 人間との歴史
新石器時代、中近東地域から農耕が広まり始め、穀物が保管されるようになるにつれて、ネズミが爆発的に増加したために、穀物庫の番人役としてネコが村の中で重宝されるようになったといわれる。
[編集] 西洋
現在知られている世界最古のものとしては、キプロス島のシロウロカンボス遺跡にて約9,500年前(考古学でいう紀元前8千年紀中盤、地質学でいう完新世初期〈プレボリエール期;en〉)の墓から人骨とともに埋葬遺体として発見された1匹のネコの骨であり、新石器時代もしくは石器時代後期から人類がすでにネコをペットとして手なずけていたことを示唆している。このネコの骨は人骨が埋葬されていた場所からおよそ40cm離れた場所に埋葬されていたが、遺体の保存状況、位置関係などから、高位の人物が飼い猫を一緒に埋葬したものと考えられる。発掘されたネコが年齢およそ8ヶ月であることから、その人物が死亡した際、一緒に殺されて埋められたとも推測できる。さらには、キプロスの同遺跡においてネコが何らかの宗教的重要性を持つ存在であった可能性も示唆されている。� �体からは屠殺された形跡が見られないため、埋められていたネコはおそらく人間と同様に扱われていたと考えられるという。ただし、同時代の同地域の遺跡からは、人間がネコ科の動物を食用にしていた跡も発見されているという。[26]
古代エジプトでは、ネコがライオンの代わりとして崇拝されていたし、バステト女神として神格化もされていた。そのため、敵側がネコの顔を自らの盾に描いてエジプト兵を追い払ったとも伝えられる。 また、ジェームズ・フレイザーの『金枝篇』によると、中世ヨーロッパでもネコは麦穂の精霊と同一視され、中国でも、獣偏に苗(正字体では「貓」)と書くように、稲穂の精霊とされていたという。ただし、漢の時代には「猫」の字はまだなく、人里近くで目にする犬猫程度の体格の四足獣全般を指す「狸」の字がネコに対しても当てられている。「#猫の別称」も参照のこと。
[編集] 日本
読売新聞(2008年06月22日)の記事によると、日本の考古学においてネコが初めて現れるのは長崎県壱岐市勝本町の弥生時代の遺跡カラカミ遺跡より出土された、紀元前1世紀の大腿骨など12点である。当時の壱岐にヤマネコがいた形跡がないことや現在のイエネコの骨格と酷似しているため断定された。
『日本釋名』では、ネズミを好むの意でネコの名となったとされ、『本草和名』では、古名を「禰古末(ネコマ)」とすることから、「鼠子(ねこ=ネズミ)待ち」の略であるとも推定される。他の説として「ネコ」は眠りを好むことから「寝子」、また虎に似ていることから「如虎(にょこ)」が語源という解釈もある(言海)。このように、蓄えられた穀物や織物用の蚕を喰うネズミを駆除する益獣として古代から農家に親しまれていたとおぼしく、ヘビ、オオカミ、キツネなどとともに、豊穣や富のシンボルとして扱われていた。
ただ、古代にネコが日本に定着していたという物証は乏しく、古事記や日本書紀などにもネコの記述は無い。文献に登場するのは、『日本霊異記』に、705年(慶雲2年)に豊前国(福岡県東部)の膳臣広国(かしわでのおみ ひろくに)が、死後、ネコに転生し、息子に飼われたとあるのが最初である[文献1 4]。
奈良時代頃に、経典などをネズミの害から守るためのネコが中国から輸入された。愛玩動物として飼われるようになったのは、『枕草子』や『源氏物語』にも登場する平安時代からとされ、宇多天皇の日記である『寛平御記』(889年〈寛平元年〉)2月6日条には、宇多天皇が父の光孝天皇より譲られた黒猫を飼っていた、という記述がある[文献1 4]。鎌倉時代には金沢文庫が、南宋から輸入したネコによって典籍をネズミから守っていたと伝えられている。『今昔物語』には「加賀国の蛇と蜈蚣(むかで)と争ふ島にいける人 蛇を助けて島に住みし話」における「猫の島」の話や[27]。、藤原清廉の逸話として「猫怖じの五位(猫怖じの大夫)」がみられる[28]。
ただし日本に伝来してから長きにわたってネコは貴重な愛玩動物扱いであり、鼠害防止の益獣としての使用は限定された。貴重なネコを失わないために首輪につないで飼っている家庭が多かったため、慶長7年(1602年)には猫の綱を解き放つことを命じる高札が出されたことが、西洞院時慶の日記である『時慶記』に記録されている。禁制はかなりの効果があり、鼠害が激減したと言われる。御伽草紙の「猫のさうし」は、これに困った鼠が和尚に相談する内容となっている[29]。
江戸時代は本物のネコが貴重だったために、ネズミを駆除するための呪具として猫絵を描いて養蚕農家に売り歩く者もいた。新田氏宗家で交代寄合旗本であった岩松家では岩松義寄から岩松俊純までの4代に渡って、ネズミ避けのため直筆の猫絵を下付したことで「猫絵の殿様」として知られていた[30]。絵に描かれたネコが古寺で大ネズミに襲われた主人の命を救う『猫寺』は、ネコの効用を説く猫絵師などが深く関わって流布した説話であると考えられている。しかしネコが繁殖によって数を増やし、一般の庶民・農家にも広まっていくと同時に、ネコの穀物霊としての特質は失われていった。ネコが人々を病から救う薬師(くすし)になったと語る『猫薬師』に霊性が残るのみである。
安土桃山時代、九州南部の大名島津義弘は、文禄元年(1592年)からの文禄の役、慶長2年(1597年)からの慶長の役に猫の瞳孔で時間を知るために、7匹の猫を伴って朝鮮に渡ったとされ、生還した2匹の猫を猫神として祀る神社が鹿児島県の仙巌園にある[31]。
日本の平安時代には位階を授けられたネコもいた。『枕草子』第六段「上にさぶらふ御猫」によると、一条天皇と定子は非常な愛猫家で、愛猫に「命婦のおとど」と名付け位階を与えていた。ある日このネコが翁丸というイヌに追いかけられ天皇の懐に逃げ込み、怒った天皇は翁丸に折檻を加えさせた上で島流しにするが、翁丸はボロボロになった姿で再び朝廷に舞い戻ってきて、人々はそのけなげさに涙し天皇も深く感動したという話である。ネコに位階を与えたのは、従五位下以上でなければ昇殿が許されないためであるとされ、「命婦のおとど」の「命婦」には「五位以上の女官」という意味がある。
[編集] 家畜・食材としての猫
詳細は「猫食文化」を参照
ネコがはたして家畜であるのかという問題に関しては、現在も議論が続いている。家畜の定義は「その繁殖に関して人間が決定的に関与する動物」というものだが、現在世界に分布するイエネコの繁殖に関してはその大部分がその管理外あるいは放し飼いと推測され、ネコ自身による自由な繁殖に任されている。イヌと異なり、人に直接的に危害を加える危険性は低いため「野良猫」は「野良犬」ほど社会問題視されることは少ない。
[編集] 日本
ネコを家畜として見た場合の利用例としては三味線を挙げられる。16世紀末に中国より日本本土に伝わった三弦の楽器が、猫皮を使用するようになり、これが三味線へと変化した。
同じ日本においては江戸時代、食用にすべきでない獣肉の一つとしてネコが記録されている。天明の大飢饉により米価が高騰し深刻な米不足が起こった際、江戸北町奉行曲淵景漸がイヌやネコの肉の価格を示して「米がないならイヌやネコの肉を食え」と発言し町人の怒りを買い、江戸 市中で打ちこわしまで引き起こす結果となったことから、当時イヌやネコの肉が食用として一部で流通してはいたものの既に一般的な食材の範疇に含まれないと認識されていたことが伺われる。一方明治期の夏目漱石が著した『吾輩は猫である』の冒頭などには、貧乏書生が捕まえて煮て食ったなどの話も見られる。昭和初期までは困窮層に「おしゃます鍋」(「猫じゃ猫じゃ」の歌詞に由来、つまり「猫鍋」)なる言葉も残っていた。猫鍋は泡が立ち、味がよくないと言い伝えられている。
琉球(現・沖縄)では近年まで猫食が残っており、1999年には無許可で猫肉を販売していた業者が摘発を受けている。一般に肉食性の哺乳類は肉が臭く、脂肪分が少ないため食用に適さず、後述のように薬膳などに限られていた。琉球では古くから喘息に効くと信じられており、現在でも先島諸島の一部では稀に用いられることがあるという。
[編集] イタリア
イタリア北部にあるヴェネト州でもネコを食材に使う食習慣があり、ポレンタの具の一つとして使用される。2010年、国営放送であるイタリア放送協会の料理番組に出演したフードライター、シェフのベッペ・ビガズィーは、「ネコの肉は、鶏肉、やウサギやハトよりもはるかにおいしい」と言い「3日間、わきに水に浸すと良い」等の調理法の説明をし、彼の出身地であるトスカーナ地方の郷土料理は猫のキャセロールだと発言。後日に、1930~40年代、ビガズィーが子供の頃は本当にネコが食べられていた事、イタリアが食料難の時代には、そのレシピも工夫されていた事なども発言している。番組中の発言により、視聴者や動物愛護団体から非難が殺到し、ビガズィーの出演は停止された。
[編集] 東アジア・欧州・その他の国
中国やその影響を受けた一部の国では、滋養強壮等の薬膳として猫を食べる。中国(特に南の方)や朝鮮では、イヌやハクビシンなどとともに食材として日常的に市場で売られている地域もあるほか、寅年に縁起物としてトラの代わりにネコを食べる地域もある。中国のある地域では、人間に食べられないよう、ペットの猫も日本での屋外イヌ同様、鎖につないで飼うことが普通であるという[要出典]。
[編集] 猫嫌いを生む背景
- ネコ好きな人間がいる一方、いわゆる猫水を家先で度々見かけることからネコ嫌いもまた多いと考えられる。
- その理由の一つに野良猫の存在がある。嫌われる行動には、糞尿、マーキング、発情期の鳴き声、庭への侵入、爪を研ぐ、台所を荒らす、飼っている小鳥や魚を襲う等がある。ネコは体が小さく動きも敏捷で捕まえにくいため、野良犬のような完全駆除が難しい。
- ネコはイヌに比べて尿が濃く糞尿のにおいが強いため、自宅の庭先や軒下などで排泄されることを不快に感じる人もいる。放し飼いの場合は、地域での理解がないとトラブルに発展しやすい。また去勢したオスネコでもマーキング行動をとることがある[要出典]。
- ネズミを捕獲することからネコを不潔と感じる人もいる。日本では、衛生面のインフラ整備が行き届かず食料事情も悪かった昭和30年代ごろまでは[要出典]、ネズミ駆除に飼い猫を活用する家庭が多かった。ネズミは多種多量の病原菌を保菌しているため、ネズミによる噛み傷や保管食料の汚染によって、ペストやコレラなどの重病にかかり、命を落とす者も多かった。ネコはこうしたネズミを引っかいたり噛んだりして捕獲行為を行うため、不潔とされたと考えられる。
- ネコは獲物を持ち帰る習性があり、捕まえたネズミや小鳥の死骸を人間の目に見える場所に置き披露することがあるため、嫌がられることがある。
- 発情期のネコの鳴き声は大きく、人間の幼児が泣く声に似ているため、不快に感じる人もいる。
- 体毛が抜けて、衣服や布団が毛だらけになることがある。ノミやダニの発生源となり人間にアレルギー(くしゃみなど)をおこさせることもある。
- 猫好きにとっては魅力的である鳴き声、仕草、人間に媚びない習性などに嫌悪感を抱く人もいる。
- 前述以外の理由では、自分の尻を舐めるネコを不潔と嫌悪するなど、様々な理由が存在する。
- 昭和57年に実施された世論調査では約半数がネコが嫌いであるとの結果が得られたことがある[32]。
- 飼い主に問題がある例も多い。猫は犬よりも比較的飼育が容易であり、犬のように散歩、排泄、しつけなどを管理しなくとも放し飼いで餌を与えるだけでも飼育可能である。そのため猫を多数放し飼いにしたり、排泄物の清掃、しつけ、避妊去勢などを行わず、その結果無責任に繁殖を続け野良猫を増やしてしまう、などの問題を引き起こす場合がある。ネコは非常に繁殖力が高いため、少数の心無い飼い主が「かわいい」「かわいそう」と無分別に出産させることで地域全体が野良猫問題に悩まされる事例もある。日本のような住宅密集地では、マナーの悪い飼い主と近隣住民が衝突する事件もたびたび発生し、猫に対するイメージ低下にもつながる場合がある。
[編集] 文化の中の猫
[編集] ネコを主題とした作品・架空のネコ
ネコはイヌと同様に、人間に身近な動物であることや、擬人化しやすいことから、漫画・文学作品等のフィクションのキャラクターとしても数多く登場する。 これについては、他項「ネコを主題とする作品一覧」、および、カテゴリ「架空のネコ」を参照のこと。
[編集] ネコの象徴化
ネコの性格は気まぐれとされ、行動・習慣はむしろ頑固で多分に自己中心的であり、イヌが飼い主のしつけによく反応し強い忠誠心を示すのとは対照的であるとされている。これは、イヌが元来群れをつくる動物であり、飼い主を群れの仲間(多くの場合は自分よりも上位)と認識するのに対して、元来単独で行動するネコでは、そのようなことがないのが原因であると言われる。もちろん全てのネコがそうであるわけではない。例えばロシアンブルーは人見知りではあるが飼い主に忠実であり、イヌのようだと言われるメインクーンは部屋から部屋へ飼い主に付いて行ったり、アビシニアンやソマリは人と遊ぶことを非常に好むなど、ネコの品種によっては、人間の生活様式に順応した性格を生まれ持って具えていることも多い。 また、ネコの飄々とした性質や姿形から、幻想的な象徴として描かれることも多い。
農家にとってネズミを捕るネコは豊穰と富を象徴する生き物だったが、豊穰というものは連続する再生(生産)であり、そのための死(消費)をも意味する。ネコの特徴として、光の量によって大きさの変化する瞳が挙げられるが、これは月の満ち欠けに擬えられた。月もやはり死と再生を繰り返すと考えられていた存在である。後世では、この死を司るという特質が強調されるようになり、中世ヨーロッパでは魔女の使い魔と見做されるようになった。
イスラム世界では、預言者ムハンマドがネコを可愛がっていたと伝えられており、現在でもネコは好まれる。
なお、現代では野猫(ノラネコ)は野生化したイエネコそのものを指しているが、『和漢三才図会』でタヌキを「野猫」としているように、古くはタヌキをネコと呼んでいることから、ネコとタヌキは民俗学的には同一の存在である。中国では「狸」の字でタヌキのほかにヤマネコの類をも指したので、イエネコを「家狸」とも称した。
[編集] 伝説・伝承
昔から日本では、ネコが50年を経ると尾が分かれ、霊力を身につけて猫又になると言われている。それを妖怪と捉えたり、家の護り神となると考えたり、解釈はさまざまである。 この「尾が分かれる」という言い伝えがあるのは、ネコが非常な老齢に達すると背の皮がむけて尾の方へと垂れ下がり、そのように見えることが元になっている。この、尾が数本に見えるネコは、実際に朝のテレビ番組(TBS)で紹介されたことがある。
猫又に代表されるように、日本において、「3年、または13年飼った古猫は化ける」、あるいは「1貫、もしくは2貫を超すと化ける」などと言われるのは、付喪神(つくもがみ)になるからと考えられている。 『鍋島騒動』を始め、『有馬の猫騒動』など講談で語られる化け猫、山中で狩人の飼い猫が主人の命を狙う『猫と茶釜のふた』や、鍛冶屋の飼い猫が老婆になりすまし、夜になると山中で旅人を喰い殺す『鍛冶屋の婆』、歌い踊る姿を飼い主に目撃されてしまう『猫のおどり』、盗みを見つけられて殺されたネコが自分の死骸から毒カボチャを生じて怨みを果たそうとする『猫と南瓜』などは、こういった付喪神となったネコの話である。
ほかにも日本人は「招き猫」がそうであるように、ネコには特別な力が備わっていると考え、人の側から願い事をするという習俗があるが、これらも民俗としては同根、あるいは類似したものと考えられる。
以下、ネコにまつわる日本の妖怪変化の数々を紹介していく。これらの話は、ネコが死と再生のシンボルでもあったことの名残りであろう。
- 死者に猫が憑く(岐阜県)
- 美濃国大野郡の丹生川村(現・岐阜県高山市丹生川町)では、ネコが死者をまたぐと「ムネンコ」が乗り移り、死人が踊り出すと言われ、ネコを避けるために死者の枕元に刃物を置く、葬式のときにはネコを人に預ける、蔵に閉じ込める、といった風習があった。今日もなお、この言い伝えは廃れていない。
- 死者に猫が憑く(佐賀県)
- 佐賀県東松浦郡でも、死者にネコの霊が憑くと言われ、これを避けるために死者を北枕に寝かせた上でやはり枕元に刃物を置き、着物を逆さにかけるという[33]。
- 死者の骸(むくろ)を盗む猫(愛知県)
- 尾張国知多郡(現・愛知県知多郡)の日間賀島に伝わる話では、百年以上も歳経たネコの妖怪を「マドウクシャ」と呼び、死者の骸を盗りにくるため、死人の上に筬(おさ、機織機の部品)を置いてこの怪を防ぐという。これと同じく、火葬場や葬列を襲って屍を奪う妖怪は「火車」と呼ばれるが、その正体はネコであることが多い。
- 生者にも猫は憑く
- 生きている人間にネコの霊が憑くという伝承もある。
- 伊予国(現・愛媛県)での話によると、飼い猫を殺した者が、のち精神に異常を来たし、「猫が取り憑いた」と言いながら徘徊するようになったという[34]。
- 山口県大島郡では、死んだネコのそばを通ると犬神、蛇神に加えて「猫神」に憑かれると言われ、これを避けるために「猫神うつんな、親子じゃないぞ」と唱えるという[33]。
- 猫の恩返し
- 貧乏な寺に飼われていたネコが、世話になった恩返しのため、野辺送りの棺を空に上げて、飼い主の和尚に手柄を立てさせる『猫檀家』という説話がある[35]。
- 一方、ネコを大事にする風習からネコを神として祀る地域もある。
- 猫神(養蚕との関連)
- 宮城県の村田町歴史みらい館の調査によると、猫の石碑が宮城県に51基(特に仙南の丸森町に多く分布)、岩手県に8基、福島県と長野県に6基ずつ存在することが確認された。さらに、宮城県には猫神社が10カ所あることも確認された。これは、江戸時代に養蚕が盛んだった宮城県南部で、蚕の害獣だったネズミを駆除してくれるネコに対して興った信仰だったようだと同館は見ている。ただし、養蚕が盛んだった群馬県では1基も見つかっていない。
- 猫神(漁業との関連)
- 宮城県の仙台湾(石巻湾)に浮かぶ田代島では、「猫神様」が島内の猫神社に祀られている。島では漁業・稲作と並んで、かつて仙南と同様に養蚕が盛んだったためネコを大事にする習慣があったが、猫神は大漁の守護神とみなされており、養蚕との直接的な関係は見られない。同島には昔からイヌはおらず、島内へのイヌの持ち込みも島民から拒否されるほどの「ネコの島」が現在も維持されている。
- 猫返し
- 東京都立川市に在る「立川水天宮 阿豆佐味天神社」内の「蚕影神社」は、養蚕が盛んな地域であった当地にあって、蚕の天敵である猫を守り神として祀っており、飼い猫の無事や健康、いなくなった飼い猫の帰還に利益があるとされ、「猫返し神社」として親しまれ、参拝者が訪れている[36]。
- 愛猫家の間では、中納言行平の詠んだ和歌が猫返しのまじないとして知られている[37]。
立ち別れ いなばの山の みねにおふる まつとし聞かば 今帰り来む
— 『百人一首』第16番
- 使い方としては、歌を書き込んだ紙に、いなくなった猫が使っていた食器を被せておく、食事場所や猫のトイレの場所に貼っておく、上の句だけ書いて器を被せ、帰還が叶ったときに下の句を書きこんで願ほどきをする、などがある。
- また、「いなばの山」と「猫返し」に関する伝承として、可愛がっていた猫がいなくなって悲しんでいる下女に、六部がいなばの宇山にいると教える「猫山」の民話が山口県、広島県、鳥取県などで採集されている[38][39]。
[編集] 俗信・迷信
- 黒猫が通る
- 日本では、ネコに道を横切られると縁起が悪いとも良いとも言われる。黒猫に前を横切られることを不吉として忌むのは、"A black cat crossing one's path by moonlight means death in an epidemic(月夜に黒猫が横切ぎると、横切られた者が流行病で死ぬ)"というアイルランドの迷信を起源とするものであり、イギリスではむしろこれを幸運の印とすることが多い(黒猫は幸運のシンボルであり、それが自分の前を通り過ぎて行く→幸せが逃げて行く、とも解釈出来る)。また、黒猫を飼うと商売が巧くいくとも言われ(福猫と呼ばれた)、店舗などを営む自営業者が好んで飼う場合もある。
- 猫には九つの命がある
- 欧米では、人間から見て命がけのような行動をする猫を、9つ分の命がないと生きていけないと思われた。
- 漁師の黒猫
- イギリスでは、黒猫を飼っていると海難事故を避けられると信じられていた。
- 幸運を運ぶ黒猫
- スコットランドでは、玄関先に知らない黒猫がいると繁栄の兆しと信じられていた。
- 猫のくしゃみ
- イタリアでは猫のくしゃみを聞くと縁起が良いと信じられていた。
- 死を招く黒猫
- 16世紀のイタリアでは、黒猫が病人のベッドに寝そべると、その病人に死が訪れると信じられていた。
- Matagot
- フランスでは、黒猫を大事に世話すると、お返しに富をもたらすと信じられていた。
- 猫と小川
- フランスでは、猫を抱えて小川を渡るのは縁起が悪いと信じられていた。
- 尻尾を踏むと婚期が遅れる
- フランスでは、若い未婚の女性が猫の尻尾をふむと、1年間婚期が遅れると信じられていた。
- 猫と噂
- オランダでは、猫が街で噂を広めていると信じられていた。
- 事故死を招くサビ猫
- ノルマンディーでは、サビ猫を見ると事故死の前兆と信じられていた。
- 死後の世界へお供する猫
- フィンランドでは、死後の世界へ旅する魂に猫がお供すると信じられていた。
- 悲運の七年
- アイルランドでは、猫を一匹殺すと、運の悪い七年間が続くと信じられていた。
- 猫が居つきますように
- アメリカでは、新居に移るときは猫を窓から入れると、家から離れないと信じられていた。
- 縁起の悪い白猫
- アメリカでは、夜間に白猫を見るのは縁起がわるいとされていた。
- 縁起の良い白猫
- アメリカでは、道の途中で白猫を見るのは縁起が良いとされていた。
- 幸運を呼ぶ猫肉
- エウェ人は、猫を珍味として食し、特に頭を食べると幸運が訪れ、未知の土地で死ぬことを免れると信じられていた。
- 縁起の悪い黒猫
- ガーナでは、黒猫が夢に出てくると凶兆と信じられていた。
- 同情するなかれ
- 道端などで見かけた猫の死体に対して「かわいそう」といった同情の気持ちを起こすと「この人なら大丈夫だ」と思われてしまい猫の霊に取り憑かれる、という俗信が日本にはある。
- 猫と犬の雨が降る
- 英語では「土砂降りの雨」を指して「raining cats and dogs」という。これは中世ヨーロッパで多くの雨が降った時、不完全な下水の洪水によって汚水が道路上に溢れそれによって猫や犬が死に道路上にまるで猫や犬が空から降ったように見えたという言い伝えに基づくものである。
- 日本と欧米での相違
- 猫の好物は、日本ではかつお節だが、欧米ではミルクとされる。また、欧米では猫と犬は仲が悪いとされる。
- 猫の埋葬
- 沖縄では猫の死骸は地面から離しておかなければ災いを招くという迷信があり、木に首を吊るしたり、ビニール袋に入れて袋ごと吊るす習慣があった。
[編集] 猫年・猫座
ネコは、東洋では十二支の動物になり損ねた動物の一つということになっている。ただ、十二支の選に洩れた理由として広く語られるネズミの計略による遅延との逸話は後世の創作で、12種の動物が選ばれた時代の中国においてはネコはまだ一部の貴人に飼われ始めたばかりで、庶民には全く馴染みがなかったことが本当の理由であるとされている[要出典]。対して、竜が選出されているが、これは、架空の動物であっても皇帝の象徴としてこれを知らない者などいなかったためである。
なお、中国の影響を受けつつ、しかし中国より遅れて十二支を整えたタイやベトナムでは、もうそのころには一般的になっていたネコを選び出している(主にウサギに代えて「卯」に当てる)。
西洋の星座にも、ねこ座は見当たらない。なぜか、古代ギリシア人は天の星々にネコの姿を見なかったらしい。ただし、17世紀になってポーランドの天文学者ヨハネス・ヘヴェリウスが「やまねこ座」を、18世紀には猫好きだった天文学者のジェローム・ラランドが「ねこ座」をそれぞれ作成している。しかしねこ座についてはあまり認められず、現在では残っていない。
[編集] ネコの名を持つ生物
生物の名にネコが入ることは例が多い。ただし、なぜこれがネコなのかがよくわからない例が多い。わかりやすい例にはミズネコノオ(ミズトラノオより小さいから)とかネコノシタ(葉がざらつくから)、ネコノメソウ(果実の形から)、ウミネコ(鳴き声が似ていることから)などがある。
- ネコハエトリ・ネコグモ・ネコザメ
- ネコハギ・ネコヤナギ・ネコノチチ・ネコアサガオ
[編集] サブカルチャーの世界における猫の扱い
猫耳の項を参照のこと。
[編集] 猫の別称
- 狸奴(りと・りど)
- 家狸(かり)
- 貓:「猫」(新字体・簡体字)に対する異体字(旧字体・繁体字)。
- にゃんこ、にゃんにゃん、にゃーにゃー:鳴き声に由来して生じた、日本の喃語(幼児語)。
- ちゃべ、ちゃっぺ、ちゃちゃ、ちゃこ、ちゃっこ:東北方言、北海道方言。
- ぬこ:インターネットスラング[40]。
- ^ 他説では四肢動物上綱(Tetrapoda)があり、顎口上綱の下位で相克関係にある。
- ^ ネコの癒し効果を売りにしている店がこの誤解によってしばしば非難されるが、店がネコの餌として販売しているのが湿り気のある燻製イカなどである場合、問題があるとしても与える量だけである。
- ^ 例えば、鎮痛解熱剤として用いられるアセトアミノフェンは肝障害等を起こすためイヌやネコへの使用は禁忌とされる
- ^ 自動車の冷却水に使用されるLLCとして一般的
- ^ 壮年性脱毛に有効な外用薬だが、薬が付着した頭部をネコがなめるだけでも心機能に問題が起こり得るとされる
- ^ ダイエット目的のサプリメントとして用いられるが、ネコにとっては肝機能障害を引き起こす。
- ^ Driscoll CA, Macdonald DW, O'Brien SJ, CA (June 2009). "In the Light of Evolution III: Two Centuries of Darwin Sackler Colloquium: From wild animals to domestic pets, an evolutionary view of domestication". Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106 (S1): 9971–9978. doi:10.1073/pnas.0901586106. ISSN 0027-8424. PMC 2702791. PMID 19528637. http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?tool=pmcentrez&artid=2702791.
- ^ 「ねとらぼ:2月22日「猫の日」に、NHK「デジタル猫暦」をどうぞ」 ITmedia News、2010年2月22日。
- ^ 「あす平成22年2月22日 2並び記念入場券を発売 北総鉄道」 千葉日報ウェブ、2010年2月21日。
- ^ Science Magazine Japan (2007年6月29日). "イエネコの祖先は近東出身 // Tabby's Ancestors Traced to the Near East(今週のハイライト)". 2008年4月19日閲覧。 [リンク切れ]
- ^ 奈良文化財研究所 読売新聞(2008年06月22日)
- ^ 室内飼育の猫の寿命については、一般社団法人ペットフード協会による平成22年全国犬猫飼育実態調査の結果の中から「家の外に出ない」猫の寿命15.9歳を参考に±2歳をつけ加えて表記。[1] 野良ネコの寿命については英語版wikipediaから4.7yearsの値を参考に±1歳の表記とした。
- ^ アニマルプラネット(Animal Planet) にゃんこの城 ~ネコがカワイイ!100の理由 その58
- ^ 服部幸 (05 2008). ネコの気持ちがよーくわかる本―猫の「ひみつ」を図解する. 秀和システム. pp. 44. ISBN 978-4798019741.
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- ^ Lenovo ThinkPlus トラックポイント・キャップ・コレクション
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- ^ 尾曲がり猫に関する考察 ― 日本「長崎ねこ」学会
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- ^ 服部幸 (05 2008). ネコの気持ちがよーくわかる本―猫の「ひみつ」を図解する. 秀和システム. pp. 190. ISBN 978-4798019741. - 耳の角度と猫の気持ち
- ^ 服部幸 (05 2008). ネコの気持ちがよーくわかる本―猫の「ひみつ」を図解する. 秀和システム. pp. 193. ISBN 978-4798019741. - 気持ちを伝える猫のボディランゲージ
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- ^ 上田穰「歴史家の見た御伽草子『猫のさうし』と禁制」『奈良県立大学研究季報』 奈良県立大学、2003・12。
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- ^ a b 鈴木棠三 『日本俗信辞典 動・植物編』 角川書店、1982年、448-457頁。ISBN 978-4-04-031100-5。
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- ^ 福田晃 「猫檀家」『日本昔話事典』 稲田浩二他編、弘文堂、1977年、704-706頁。ISBN 978-4-335-95002-5。
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[編集] 文献
- ^ 頁。90:『白猫の遺伝』 大木卓
- ^ 頁。59:『形態・特徴についての言葉』 大木卓
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- ^ a b 頁。不明
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