2012年4月15日日曜日

馬とのつきあい方(調教律) - Uma-no-kokoro(馬の心~理解と活用)


 C  馬との付き合い方(調教律)     誤解 ・ 錯覚 ・ 認識不足?

    上欄の「はじめに(目次)」をクリックしてから開始すると便利です

      ーーーー人間は失念していますが

               どの馬にも"個性"があるのですーーーー

 それぞれの馬の個性を把握していれば調教も管理も効率的になり、能力発揮に磨きがかかる筈です。また、競馬ファンならば楽しい展開が開かれ、予想や解説にも重さや深みが加わること必定でしょう。         その個性を知る方法として、牧場や育成場などでは、「群の中の社会性を観察して知る方法」が普通です。  飼育担当者ならば、以前に管理した馬との比較から判断できます。競馬ファンならば競走内容の分析で判定が可能です。

 

 

グループ(馬群)の中で他馬との関り方やヒトに対するパフォーマンスからその馬の個性を判定するのが確実な方法です。 つまり、自主的行動をとっているか、それとも他の馬に追従・服従型であるかであって、対極させた行動形態の程度を採点し、その平均点を出して当該馬の心理傾向を見分けるこの結果をベースにして調教や飼養・管理を行えば、失敗することなく短時間で効果が得られるのみならず、馬にとっても良い事だ。

「トレーニング・センターの検疫厩舎で<新入厩馬>を受け取る時に、その馬の育成場での生活振りを質問しなさい」と競馬学校で教えたが、実践している人は少ないようだ。これは入厩馬が到着したら牧場や育成場での日々を下記の要領で聞き取り採点して個性を知り役立てなさいと言う親心だったのですが? どうしたんでしょう。本人、牧場、輸送人・・・・

何が問題なのかなア。

 

◎ 思い入れを排除し、客観性を持って採点し、平均点を出し判断する

 

《採点要領例》

 

群の中で最後に採食    1←2→4→5   採食時などに縄張りを意識・主張

 

仲間の怒りを避け逃げる  1←2→4→5   新入りを監視(喧嘩をしかける

 

(人が馬房に入ると)                     ・(人が馬房に入ると)              

       尻を向ける     1←2→4→5        [人を]出迎える

・(馴致・調教を始めると)                   ・(調教・馴致で)                

         従順       1←2→4→5        意地っぱり、頑固

 

   ※ 以上の対極にある事柄で、[3]を普通とし、どちらにあるか採点し、

     平均点を出して、下記に当てはめて判断する。

 

   引込み思案型    1←2→4→5    餓鬼大将型       

  (非リーダー・タイプ)                (リーダー・タイプ)

 その馬の調教や管理に携わっている場合は、前述の採点方法で5点に近い平均点ならば     

    「リーダー型」、3点以下ならば「非リーダー型」と判定出来る。            

しかし、 一般的には無理である。そこで、その馬の競馬中の走り方を分析する事で知る事が

   出来ます。<勿論、騎手の意図を割り引かねばなりません

 ※脚質・・・・・一般に競馬内容から「逃げ」・「先行」・「差し」・「追い込み」の

                4群に分ける競馬振りのこと

                        ・逃げ~  馬群の先頭を走り続ける馬

                        ・先行~  馬群の先行集団を走る馬

                        ・差し~  後方馬群を走り決勝線近くで先頭へ差し込む馬

                        ・追い込み~最後方か臀り馬群を走り、最後の直線で大きく

                                 追い込んで先頭を狙う馬 

(A)と(Y)、(B)と(Z)の間の脚質変換は比較的多い

精神的成長と競走経験を重ねれば<引込み思案型>から<餓鬼大将型>の変化もある

(例えば、3歳クラッシック競走は、他馬を刺激しないように、後方を走り大外を回って勝っていたトウカイテイオー号が、長期休養明後の有馬記念では、精神的に逞しくなって、馬群を割って追い込み勝ちを決めた)

前述の"群の中での個性の見分け方"「平均点が3点以下」だった馬、また競馬内容から <引込む思案型・非リーダータイプ>と思われる馬の飼養管理上の注意事項

 前述の"群の中での個性の見分け方"「平均点が3点以上」だったり、競馬振りから 

 <餓鬼大将型・リーダータイプ>と思われえる馬の飼養管理上の注意事項

   "群れの中での個性の見分け方"平均点が3点以下の馬

    競馬内容から<引込み思案型・非リーダータイプ>調教上の留意点

   "群の中での個性の見分け方"「平均点が3点以上」の馬

    競馬振りから<餓鬼大将型・リーダータイプ>と思える馬

    の調教上で心に留めて置かなければならないこと

    餓鬼大将だから《意地っぱり》。 従って

 

 

その馬のパフォーマンス振りから判断するわけだが、客観性を持たせるため、今までに遭遇した多くの馬達との差(調教や飼養管理時の反応の違い)を見つけて判定する。

 

 

 

 

 

個々の馬一頭だけでは客観的判断は出来難い。

そこで、以前に調教・飼養管理した馬と

「情緒や感情の表し方」を比較して判断る。

その馬が見せている情緒・感情パフォーマン

スは下記のように対比させてどちらに傾くか

によって採点する。

採点基準は、以前に調教・飼養管理した馬の

パフォーマンスを暫定的に中間(普通)と考

えて、その馬達との比較で配点して合計点を

きめ、さらに、平均点を算出して、その馬が

感情型(前述の「引込み思案型」に類似)で

あるか、沈着不動型(前述の「餓鬼大将型」

に類似)傾向にあるか判断する。もちろん、

愛馬のパフォーマンスも変わることから、

評価も変化する場合もあり得る。

 

     感情型          1←2←  →4→5   沈着不動型

     (≒引込み思案型)        [普通]         (≒餓鬼大将型)

 

 

  ※(採点要領・例)

何ごとにも反応する         1←2→4→5   ・影響のない刺激は無視 

  (不必要な刺激を                              

   選り分けられない)

目の前の仕事に集中出来ない 1←2←→4→5   ・心の集中が上手

 

すぐ、心の平静を失う        1←2←→4→5   ・不精で動じない

  (馬房内でも臆病で怖がる)

「喰い」が細く              1←2←→4→5   ・食欲旺盛で管理し易く

   常にイライラする                        手が掛からない 

 

前述のとおり「競走」は、その馬の気質や心理状態が表面に現れたパフォーマンスです。

そこで、調教・飼養管理者が前項の「個性の見分け方」の判断を補完したり、競馬ファンが勝馬投票資料としての競走馬の心理を知るための手掛かりとなります

 

 

        <沈着不動型(≒餓鬼大将型)>

 

          <感情型(≒引込み思案型)>

            下記パフォーマンスを示すことが多い

 

 過去の遭遇馬と比較する前述の"(個別の)個性判定法"「平均点が3点以上の馬」、あるいは"レース振り"から<沈着不動型>と判断された馬の飼養管理は、先の群の中での判断で<餓鬼大将型>の飼養管理と同じで良いのだが、下記のような方法もある。 (勿論、馬群の中での判定で<餓鬼大将型>と評価された馬のも下記の方法が当てはまる

 前述の"(個別の)個性判定法"「平均点が3点未満の馬」、                 あるいは"レース振り"から<感情型>と判定された馬は、先の群の中での判定で<引込み思案型>の飼養管理が当てはまるし、下記のような注意も必要。             (当然、グループ内判定で<引込み思案型>とされた馬も、下記の注意に該当する)

 


クイズ:あなたのための完全な猫は何ですか?

過去の遭遇馬と比較する前述の"(個別の)個性判定法"<沈着不動型>と判断された馬に調教を施す時、下記のような留意が必要になる。  このことは"馬群の中での個性判定"<餓鬼大将型>と判定された馬にも当てはまる。従って、ここで<沈着不動型>とされた馬の調教時にも「餓鬼大将型の調教時の留意点」が当てはまる。

極端な場合よくある{内・外」のほかに、図のように「後」の3頭で併せる

 前述の"(個別の)個性判定法"<感情型>と判定出来た馬に調教を実施する時に特に留意が必要な事柄。"グループ内での個性判定法"<引込み思案型>判定された馬にも言える事であり、この<感情型>の馬にも「引込み思案型の調教時の留意点」が当てはまる。

 

                言わずもがなの事で、狩猟民族では子供でも実践している

                し、 我国でもプロフェショナル・ホースマンは無意識に

                に実践していること。

           <徒労>

 

「馬作り」に夢とロマンを託して、涙ぐましい努力をしているのに、馬が走らない(勝ち上がれない)人を何人も知っています。この人達に共通する特徴は「馬がして欲しくない事を一生懸命頑張ったり」「馬に対してA・の順に行うべき事を合理的にA・としている」ために逆効果となってしまっている事です。この徒労の人が転厩して啓発を受け、大成功した人も沢山います。

 

 

馬は賢いから、ヒトが跨っただけで、その人の技量を知り判断してしまう」と言う

話を良く耳にします

 

「吊り橋の4本の支柱」を「馬の四肢」と考えて下さい。上手な騎乗者は中心に居る事となるから、それぞれの支柱(肢)に均等な重量負担で揺れません(馬が正常に運歩出来ます)

下手な騎手は吊り橋の偏った所に立って居る事と同じで、特定の支柱(肢)の負重が大きくなり、当然、異常歩様とならます。この馬の動きを見て"馬は騎乗者の技量(ウデ)が判る"ほど賢いと言われています。単なる、自己防衛反応に過ぎないのですが・・・・。

(そのメカニズムは次のページを参照)

人間は身体と腕を鎖骨で連結しています。 しかし、《馬には鎖骨が無い》から筋肉がその連結をしています。  つまり、地面に立つ肢に筋肉で胴体を繋いでいる(前躯)わけで、

<吊り橋>に例えれば支柱(肢)で支えた橋桁(胴)に騎手が騎乗しますから、直ちに対応しなければ蹉跌いてしまいます。馬にすれば、転倒予防の防衛反応に過ぎないことなのですが"馬は怜悧(リコウ)だから騎手の技量が判る"と神秘的に話されている。

           <神になる馬>

 

 「動物と思って、侮ってはいけない。君より霊格の高い馬が居る」と神道者が言った。  この世の役目を終え、帰魂後に"神になる馬が居る"のだそうだ。    腕白小僧の頃、母親の言いつけで鶏卵を取りに行き、喚く雌鳥を追い払ったら、雄鶏が出てきて一声を発し睨まれた。すると、悪餓鬼は卵を集められなかった。

 その後、中山競馬場・競走馬診療所での話。後に種牡馬になったノボルトウコウ号に注射をすることになったが、騒擾して大変。「センセ、うまや(厩舎)なら納得して猫なんだけど」と再三言うので往診した。自分の馬房の中央に仁王立ちで「温和しいから、大丈夫だから」と担当厩務員は牧士頭絡(モクシトウラク)も着けず保定もしない。結局そのままで注射をうった。その事があってから暫くして、頚に手綱を巻いたままで前を歩く厩務員の背中の匂いを嗅ぎながら付いて歩くノボルトウコウ号を度々見た。あのノボルトウコウ号や子供の時代の雄鶏は神になるんだなと、今でも思っている。

                   <寝藁鉤(ネワラカギ)>

 

昔、米俵を担ぐために手鉤(テカギ)を使ったが、これを長大き化させ径40センチ程の寝藁鉤で敷藁を集めたり万遍なく敷いたりしました。この寝藁鉤は鉄やアルミ製で先端が鋭っており、馬房内で作業する厩務員(馬にとって"ボス")の姿が嬉しくてジャレつき、作業の邪魔をするので叱ります。ところが、湾曲した寝藁鉤の腹で打ったつもりが、鋭利な先端で叩いてしまって刺し傷となり、診療所に駆け込む事があります。厩務員の心配を他所に当該馬は従順で正常歩様、何も無かった様に振舞うのが普通です。人と馬の認識の違いで、馬は叱られた原因を自覚しているのです

 

 

 何気なく《ささいな事》と見逃したことが原因となり、後に悪癖となってしまって 苦労する例は良くある事で、管理者は《思慮深い対応》客観的観察が必須用件である

 

        野生馬時代には"群のリーダー"のみが動きを制御した

褒め方は難しい馬に理解させるのは難しく、その方法として誰もが「角砂糖」や「ニンジン」などの食べ物を与えて褒めるが、人間が考えている程効果があるわけでなく、《優しい手の温もり》や《穏やかな声》などの方が良い。  最も効果があるのは[形に出来ない信頼感]です。

"欧米で厩務員が愛馬に昨夜の出来事を話している姿"の目撃談を良く耳にする。そして、「馬には話の内容が解るわけがないのに」との言葉が続くのが普通だ。 確かに、馬には"昨夜、厩務員が酒場で遭った女の話"を聞いても解らないのは当然だが「信頼されている」と痛感している筈だ。

 

 

 懲戒方法・・・・・・馬が機嫌を悪くしたり怯えたりすることは何でも懲戒の手段となる。

        しかし、「両刃の剣」でもあるから"智恵ある行使"が大切となる。

         <ムスタング>

 

年配者には懐かしいクラーク・ゲイブルとマリリン・モンロウの映画「荒馬と女」はアメリカの野生馬ムスタングの捕獲と調教を下敷きにした男女の話である。ヨーロッパから持ち込まれた馬が野生化したもので米国の自動車や戦闘機の名前にもなった。このムスタングは警戒心が強く臆病だ。しかし、捕獲後の調教は驚くほど楽で簡単とのこと。世話をするヒトに頼りきりで、他馬に混ぜると群のリーダーに従順とのことである。馬の深層心理を知る事が出来る話だ。

 

          <昼夜放牧の大切さ>

 

骨の成長」や「再生更新」《破骨細胞》《骨芽細胞(コツガサイボウ)》の活動バランスによって成り立ちます。骨からカルシウムなどを取り出し筋肉などにリサイクルする《破骨細胞》は、いつも一定に働きます。しかし、新しい骨を作る《骨芽細胞》は運動負荷に比例して活発化します。つまり、充分な運動負荷で骨量が増え運動量が乏しいと骨芽細胞の活動が破骨細胞の活動水準まで到達出来ず骨が細化します

 

          <馬場の素材の変化で>

 

"人の爪切り"と同じ"削蹄"だが、蹄鉄を装着するし体重を支えるから、経験に裏打ちされた技術が必要です。  そこで、"広い面で負重させるべく蹄が大きくなるようにする事"と"真直ぐに走り易くする"ため、"平に削蹄したら内側に一鎌入れ薄く剥ぐ"と言う方法が、正しい競走馬の削蹄方法でした。クッションの良いウッド・チップ等の新素材馬場が出て来て、深く沈み蹄への抵抗が大きいので、反り(反廻)が良くなるようにさらに、蹄形が大きくならないように、蹄尖部を鑢(ヤスリ)で整えるのが優れた削蹄法となったとの事である。「具体的には言えないけど、この頃、装削蹄法が変わって来たような気がするのは俺の錯� ��かなア」との私の質問に"本物のカリスマ装蹄師"のO君が解説してくれた。

 

 

  「馬が嫌がること」をして馬の好ましくない行動を迅速に矯正する方法

           <母の愛・祖母の愛>

 

JRAのアイルランド研修から、帰って来た技術調教師[免許ヲ貰ッタバカリデ、厩舎貸与ノナイ調教師]が「アイルランドより栗東の厩務員の方が愛馬心がある」と言う。話を聞いた後で彼に言った。「なるほど、表面的には君の言うとおりだろう。しかし、騎手時代も含めてプロ中のプロである君の見聞としては残念な事だな。例え話をすると、今ここに、3歳児が居るとする。そして、その児を母親が手を引いていて転んだ。また、祖母と手を繋いでいて転んだ状況を思い浮かべてくれ。その時のそれぞれの対応を考えてみよう。お祖母ちゃんの場合は「おう痛い・痛い」と言いながら抱き起こすだろう母親の場合はどうか。「ほら、泣かな� ��で立ちなさい」と自ら立ち上がるように仕向けるに違いない。さア、そこで、この事を馬との関り方に当てはめると、母親のように馬に接するのがヨーロッパ型だ。祖母のように取り扱うのが君が言わんとする日本式愛馬心だよナ。君が厩舎を貸与されたら、母親か祖母か?どうする?」。その後、技術調教師を卒え、調教師として厩舎を経営しているが、成績は今一つの低空飛行のようで、脱皮が待たれます。

 

          

 

         《負の条件付けで心理的な矯正方法

          <疝痛(ハライタ)治療>

  

好奇心旺盛なT君が福島競馬場に滞在出張。忙中閑ありで英文の中国鍼術のパンフレットを 読み、競馬場の乗馬で実行して好結果を得たのが電気鍼の端緒。それが全国にひろまった。

 中山競馬場の頃、朝、出勤すると所長が「疝痛馬の治療に行くから、電気鍼を車に積め」との指示。場内の厩舎かと思ったら外に出てドンドン走り、成田空港の先のシンボリ牧場に着いた。厩舎では、全身擦過傷のスィートルナ号が暴れている。牧夫さん達に抑えて貰って疝痛のツボに鍼を打ち、一時間以上通電した。暫時中止休息、再度通電と繰返したら夕刻には良化したが、疲労から横臥し続けた。同馬は1勝しただけのこともあって、そのまま繁殖入り、初仔がシンボリフレンド号と言うオープン馬。さらに、シンボリルドルフ号の母親にもなったし、娘も走った。カツ丼を一膳、ご馳走になり5冠馬の母の命を助けたと言う自慢話が出来るのも、閑なローカル競馬でも研鑽に� ��めた獣医師が居たからだ。

 

          <肢の長さが違う>

 


ヒトの研究では、ない主要な有害で安心されている

JRAの獣医職は装蹄師免許の取得が求められ、そのための研修を受けた時の話。実習馬を提供してくれた馬事公苑に元・競走馬ハーバーオー号と言う名前の障害競技馬がいた。この馬の前肢は左右の長さが違っていて、左前肢の方が長いと言う。「まさか?」と思ったが・・・・。 ハーバーオー号は手前変換が苦手で競走馬時代は"左手前のみで走り"東京競馬場(左廻り)では好成績、中山競馬場(右廻り)ではコーナー・ワークが下手でスピード・ダウンしてしまったとの事。その結果として左前肢の方が右前肢より長くなってしまったそうだ。調教技術の向上と多様化から、今では、こんな馬は存在しない筈。今では、いろいろな調教施設を上手に活用して、その馬の特徴に磨きをかけている厩舎が増えている。

          <貸与馬競技>

現在は自分の愛馬で参加する自馬競技が一般的だが、馬術競技形式に"貸与馬競技"と言う方法がある。これは主催者が集めた複数の馬に前段・後段と騎乗し合って総減点で争う団体競技で、戦前から昭和40年頃までの学生馬術競技会は、この形式だった。当然のことだが各大学が他校のために提供する競技馬は、障害飛越を嫌い拒否する大変な癖馬。出場選手も眼鏡やヘルメットが外れないような準備から始まり重装備、心の覚悟も必須だった。スタート前に数分の騎乗馴致時間があり、反抗・狂奔した馬が角馬場内を走り廻って終わったり、極端な場合はスタート・ラインを通過させただけで勝ったなどと言うケースもあった。稀に強引な手法が好結果となり飛越通過出来る馬も出て来る。懲戒の鞭で臀部に ミミズ腫れが沢山出来たり、拍車傷で脾腹から出血している馬もでた。学生の気力を見るには良いかも知れないが動物虐待以外の何ものでも無い。("戦後、進駐軍が来て「日本人は犬を調教・訓練しないで飼っている」と驚いた"との話を読んだが、馬も同じだったんだな、きっと)

 ずっと以前、「つぶやき・シロー」と言う芸人が居てボソボソ話して人気がありました。

 そこで、物言うわぬ馬ですが「呟(ツブヤく)三郎号」と言う馬に障害飛越で話して貰った

  馬と騎手の会話は、馬とヒトとの約束[調教]の上に成立する。  (手綱などの)扶助 騎座  (騎手と鞍の接点)・重心の賭け方随伴(騎手の姿勢)等々がキー・ワードであり、

人と馬との間の"言葉"となって会話(コミニケーション)が出来る。

 

 野生馬時代に群を作り"群の中"で生きていた馬は、競走馬となった現在でも本能的には「馬群の中が最も安心出来る場所(下図の"鬼"が虎や狼であった)。 従って、本来は、馬群の先頭や殿は走りたがらない筈。しかし、闘争心を涵養されたりして、後天的に身につけたので普通に見られるようになった。

          <騎手が引退を決意する時>

 

「ゴール前では騎手も馬も呼吸(イキ)を止めて必死に走るし追う」と一世を風靡した元・騎手が語った。「若い頃には何でもなかったのに、年齢と共にイキ(呼吸)の持続が出来ず苦しくなって、つい呼吸をしてしまうんだヨ。すると、待っていたように馬のヤツも呼吸をするから肢色(スピード)も鈍るんだナ。その結果として、鼻差とか頭差とかの僅差で負けちゃうわな。(入線後の)向う流しから戻って来る時に必ず担当厩務員とその家族の顔が浮かんで"今夜、家族揃って楽しい夕餉が出来たのに、俺のせいでパアになった"と思うわけさ。そんな事を感じているとは露知らず、"ご苦労様"なんて言われて見なさい。"嗚呼、俺も乗り役をやめなきゃならない潮時だなア"と感じる体験が何回かあって、騎手は引退を決意するんだヨ」

          《走りたい気持ちの涵養です》

          <一完歩> 

 

馬体の大きさにもよるが普通の一完歩[四肢を全て踏着させた歩行]は7~8メートルである もし、一完歩で僅か10センチ程伸びたとすれば、一マイル(1600メートル)の競馬で21メートル 程の差が出来るのです(机上の計算ですが)。だから、気分良く走った場合と厭々(イヤイヤ)走った時では差がでますから、「馬なり調教」も愛馬の心を見つめながらが大切です。一説によると米三冠馬シアトルスルー号の一完歩は15メートルだったとか。また、あのハイセイコー号は13メートルだったと聞いた

                  <野平祐二調教師>

 

美浦から栗東TCに転勤して暫くした頃、診療所の課長室に故・野平祐二調教師がやって来て「Mさん、アナタが言っていた"走るのが楽しいと思っている馬"を、やっと作る事が出来ましたから観て下さい」と言い、出張して来たシンボリルドルフ号の馬房に連れて行かれました。肢の長い鹿毛馬が他所の馬房にも関わらず、物おじせず、のんびりと佇立していました。見た目には、やや良いぐらいの馬体で、特段素晴しいとは感じられません。「内面的な素晴しさはオモテにはなかなか出ませんけど良い馬ですね」と言ったのだが、今にして思えば、野平さんは最高の褒め言葉を期待してたんだろうなKYだったなア・・・・

 

 

        昼夜放牧された牧場の馬を観察してみると

         <私の一本刀土俵入り>

 

学生の頃、古い小さな解剖研究室の前の空き地に、工事現場の木材をを運び無断で放牧場を作ったことがあった。  解剖の授業を自主休講し、放牧場の馬に昼飼を付けようとしたら、解剖の授業を終えた吉川徹雄教授に出会ってしまった。 詫びると「授業は何時でも本で解るけど、馬の餌付け時間は決まっているからネ。早く付けてやりなさい」と笑いながらおっしゃった。卒業の時、謝礼に訪ねると、先生は机の抽斗(ヒキダシ)から出した精密な解剖図を示しながら「僕が卒業の時は不景気でネ。就職口もない程の出来の悪い学生だった僕が世界中の研究者に判らなかった馬の筋肉を二つ発見したんだよ馬の解剖学なんて昔に研究し尽くされた陳腐な学問だけど、捨てたもんじゃ� �い良く何事も<石の上にも三年>と言うけどほんとうだよ。頑張れば誰でも何とか成るものさ」とバサラ振りで有名で不出来な私に諭してくれた

退室したら何となくヤル気が湧いて来た記憶がある。     子供の時に聞こえて来た浪曲「一本刀土俵入り」の駒形茂兵衛は腕力で恩人の危機を解決して"期待された土俵入り"の代わりにしたけどなア。俺には何もないしなア、恩義の踏み倒しだよな。

 

                   調教馴致された馬の本性(本能)が現れる時

                   (参照「B3過去からの習性」etc.)

 

  安静な馬房などで寛いだとしても敏感な知覚はそのまま

  したがって、本能のとおり反応・行動する。

          <馬の時差ボケ>

 

ノーザンダンサー号やニジンスキー号を送り出したカナダのウインドフィールズ牧場に滞在した時、専属のデ・ガネス獣医師とベンソン調教師から《馬の時差ボケ》の話を聞いた。

東から西への移動は問題がないから翌日に出走しても構わない。しかし、西から東の場合には配慮が必要との事だった。つまり、トロントやニューヨークからロサンゼルスやサンフランシスコに行き競馬をする時は、到着した翌日の出走もOK. 逆の場合には、到着後5日から1週間ほど調整する余裕が必要との話だった。カリフォルニアでも同じような話を聞いた。

 

《生産(ボクジョウ)》《育成(チョウキョウジョウ)》《競走(トレ・セン)》の各過程を通して

一貫性がないから"馬達"はとまどう

 

TVの競馬中継を観ていると「パドック(下見所)解説」として古参のジャーナリストが 出走馬の体調や状態の分析説明をしているが「下見所では、どの出走馬も異常状態にある」ことをを忘れている。

※ 前述のA10 相馬からの心理傾向」B23 馬の鼻は雄弁家」

B24 耳は感情の灯台B25 尾は口ほどに物を言う」のページで

図示した仕草を参照のこと

          <女性記者>

 

あるパーティで某スポーツ紙のデスクと出会い馬談義に花が咲いた後「俺は、もう直ぐ勇退しなければならない。そんな事もあり、お願いなんだが、トラックマンをさせている"あの娘"を何とか一人前にしたいので力を貸して欲しい」と言われた。厩舎スズメに評判の美人記者で、その後尋ねて来た。そこで、出走馬の心を予想の中心にして見たらと話した。

その方法として、種牡馬(父)とブルードメアサイアー(母方の祖父馬)が共通な馬を選び競走形態<馬の個性の見分け方 C3,C7参照>で仕分けをし、さらに日常の取材で「その馬の性格」を確定して、出走馬それぞれの競走傾向を中心に置きその他の要因も考慮して印を打つ。パソコンを利用すれば難しい作業ではないし、誰にも真似の出来ない情報の所有者となる。さらに、君が子育ての最中でも在宅で記事が書けるヨ、と嗾(ケシカ)けたが1~2年の地道な努力は出来ないらしく無理らしい。否、俺の話が信じられなかったのだな、きっと。

          <信頼>

 

納得させれば、馬は騒擾することがない」と理解しているのだが、実務としては上手くいかないと嘆く厩舎人が多い。 調教を終えて、曳き手(馬を曳く綱)を頚に巻きつけられた馬が(達成感とともに)犬のように、先を歩く厩務員の背中の匂いを嗅ぎながら付いて歩く信頼感に溢れる微笑ましい姿が、今では見られなくなった。

 

                  <これもF.テシオの著書載っていた話

 

          <オリエンタル・マジック>

 

一般に欧米人(白人)は不器用だと言われています。骨折の螺子固定法[重症な骨折をボルトで固定して治療する手術方法]の習得でペンシルバニア大学に行っていた時の話。大学院生が入院馬房で包帯を取り換えていたのだが、下手で失敗を重ねるので、思わず失笑してしまった。すると、怒って「お前がやってみろ」と言うので、お安い事と取り換えたら「オリエンタル・マジック」と称賛された。こちらはシャベリが不十分なだけなのだ。でも、それからは風通しが良くなった。「芸は身を助ける」と言うが、ほんとうだナと痛感した。

          <濃い餌・燕麦>

 


なぜ科学傾けるヘルペスウイルス

昔の厩舎は「馬栓棒」まで木製で、馬が咬んだりして外れ易く、収容馬がよく逃げ出した。逃げた馬が馬糧庫に入り込み、エンバク(燕麦)などを食べまくり、腹痛(疝痛)になったりした。時には、食べ過ぎ→過栄養で蹄が脱けたりしたと先輩から聞いた事があります。

燕麦と言えば、昭和30年代には国内産が一般的でしたが、40年代になると外貨事情も好転したこともあって、豪州産が輸入されるようになり、太るから内国産の1/2量にしないと駄目などと言われた。その後、北米産燕麦も輸入されるようになり、北米産は「コズミ易い」とか「鼻出血を発症する」との話が興り、お湯に浸してから給餌した。それから、いろいろ研究し、また海外視察などを重ねて現在の形になった。

 

 人間も馬も胃は酸性・腸はアルカリ性。その間の十二指腸で中和するのが胆汁の働きで 普通は食物の通過と共に分泌される(他に脂肪の分解作用)

          <木曽馬の腹>

 

 馬の腹については「巻き腹」とか「泥鰌(ドジョウ)腹」とかいろいろ表現されますが 左右同じではなく、ほんの僅か右腹の方が大きいと言われています。    笹や雑草など粗食をする《木曽馬》は盲腸が発達しているから盲腸のある右腹の方が 左側より出ていて誰でも肉眼で判ったと授業で恩師が言ってました   その後、馬事公苑勤務となり、 開田村(長野県)に木曽馬を買付けに行き、それを確認しました。

         <蜂蜜と愛馬心>

 

毎年、ダービーが終わると管理馬を北海道に移し、夏の札幌・函館競馬シリーズで二桁勝利を挙げている調教師がいた。ある夏は、有力馬が次々に惨敗し、わずかに担当厩務員がチャランポランで勝利を期待出来なかった馬が勝った一勝だけだった。残りが一開催だけとなり、反省と点検をしてみたが例年と変わった事をしたわけではなかった。唯一違ったのは、"掘り出し物"としてハチミツを貨車一両分購入したので、それを全員に持たせて出張させたことである。アドバイスを求められたが、聞き合せて「真面目な厩務員ほど多量のハチミツを給与した結果、担当馬の栄養吸収率が低下し、さらに酸性体質となり成績が上がらないと推定した。ハチミツの給与を中止す� �ようアドバイスしたら、調教師は残念そうな顔をしたが、それでも実行した。すると、続々と勝ち上がって10勝して帰京した

 

 

     "動物の中で<馬の消化システム>が最も発達している"と有名な解剖学者

 

          <アロエと疝痛>

 

美浦トレセンに移転前の中山競馬場での話。馬も獣医職員も全国に散る夏。名競走馬アローエクスプレス号の妹で、父が大種牡馬テスコボーイ号と言う超名血2歳馬が疝痛のなった3昼夜の治療の効果もなく通常の疝痛でなく軽度の腸捻転を疑いながら対症療法を続けていた。管理する調教師が《アロエ》を飲ませて欲しいと言う。理由を聞くと「昔、同じ様な疝痛に、この世界の泰斗の某調教師が"アロエの服用"を依頼して治癒したことを見た」と言う。アロエは峻下剤(シュンゲザイ・・・・作用が急激な下剤)だから腸が動き過ぎて重度の腸捻転になり死にますよ」と話しても納得しない。「某先生の馬はアロエで直った。これと全く同じ症状� �った。あの時にアロエを飲ませれば、と後悔したくない」と主張する。「おそらく、長期間の疝痛のイチかバチかの治療法で、腸の蠕動が強くなって、たまたま正常な状態に戻ったから治癒出来たのでしょう。治癒の可能性は一割以下しかない賭けですよ」と説得しても駄目。札幌に出張中の所長も電話で説得を重ねてくれたが駄目。我々だけでなく厩舎人も残留の少人数で連日の徹夜で皆フラフラだった。所長の指示もあり6日目にアロエを擦り下して飲ませると3時間で斃死した。今でも、思い出しては残念に思う話である。現在では、開腹手術など治療も進歩しているが・・・・・・。

 

    馬の内科疾患の大部分を占める病気で下記の矢印のような経過で重症化する。

     治癒は時間を縮めて逆の経過で良化。             

     (換言すれば原因はいろいろあるが、内科疾患は下記の疝痛症状を示す)

 

                馬の糞(フン)は一度に2kg毎日7~10回します

          一塊に10粒・ゲンコが1回>

 

大勢の旧・陸軍の軍馬関係者から聞いた話。

担当馬の馬糞を、ホウキ(箒)などで割って、その中にある未消化の燕麦粒を数え、一塊中に10粒以上あると、殴られたとの事である。<一塊10粒、ゲンコが1回>で辛かったとのこと、勿論イジメです。

          <指定場所>

 

往診に行くと、飼葉桶に忌避剤のクリボックス(馬の嫌いな匂いのする軟膏)が塗ってある。理由を聞くと、"飼葉桶の中に排泄をする癖"があって、食べ終わって空になった桶に必ず排泄するとの事だった。食べ終わるのを待っていて桶を外しなさいと指導した。さらに「馬房の隅にボロ(馬糞)を置いてみたら?」とつけ足した。半月ほどすると「先生!! お蔭さんでウマヤ(馬房)の隅にするようになりました」と報告に来た。

         <馬の性格は担当厩務員に似る>

 

良く「馬は管理する厩務員に似る」と聞きます。   厩舎に往診に行き、帰ろうとしたら酒脱な男と言われている厩務員が午後運動から戻って来て呼び止められて立ち話。傍らで、彼のカミさんが天日乾燥の敷藁をひっくり返していた。「センセ、ナニは身を立てるから、立つと言うんでっせ」と言う。「うちのテキ<調教師>がアンチャン<騎手見習い>で来て間もない頃、ひどく汗をかいたので、大テキ(先代の調教師)の奥さんが風呂に入れてやり巨根の持ち主である事を発見した。それで、兄弟子でなく弟弟子のテキを娘婿にしたんヤ・・・・・云々」。曳き綱を伸ばして遊んでいた馬が、寝藁返し作業中のカミさんの尻を咬んで遊びはじめた。「コラ、コラ、そんなところをイロウたら(いじったら) オトウサンに叱られるがナ」と笑いながら、窘(タシナ)めたけど止めませんでした。

 

 

 東京観光の目玉、江戸情緒を今に伝える 花魁道中は、高下駄のポックリ(木履)で歩くため、外に大きく振り回して歩く。人は走ったら無意識のうちに足が一直線上をたどる。   馬も同じで、

前肢は左右どちらも一直線上を運歩します。人も馬も走行中の体重を支えているためです。

         <誤解の一人歩き>

 

 「直線上を走り易いから、俺は内向蹄の馬を採る」と某調教師がしたり顔で言った。蹄が内側を向いた馬も拒まないと言うわけだ。「仮性内向蹄じゃないですか?。ほとんどの馬は外向蹄で、それがひどくなると、球節など上は外を向き蹄だけが修正作用で内を向く"仮性内向蹄"になるんですヨ。競走馬の宿命みたいなものですがネ」と答えておいた。こんな話が牧場や馬主に伝わり一人歩きするんだろう。TV解説者が「あの栗毛は体調が良いですね。"連銭"が沢山出ています」などと言う。「芦毛」の場合は"穴あきコインが連なる"ように見えるから"連銭"だが、栗毛や鹿毛の場合は"籠目(カゴメ)"と言うのが正解だ。でも、今では"栗毛� �鹿毛も連銭"と間違って使っている。

 

          <ポニーの調教>

 

馬事公苑での話。食道で、ポニーの調教の草分けである山谷職員が漬物だけで昼食を食べているのに気がついた。そこで、肉や魚は嫌いなのかと問うたら、いや大好きですとの返事。 理由を聞くと「新馬を調教しているから」とのこと。管理責任もあるし「食べる物を食べて頑張って欲しい」と言うと泣きそうな顔で、次の話をしてくれた。調教は馬が勉強する事だから、信頼されることが最も大切なこと先生が虎や狼と同じ匂いをさせていたら、生徒は怖がるばかりで教育(調教)は出来ません」。  彼は調教を始める一ヶ月前くらいから "肉断ち""魚絶ち"をして匂いを消し、 以後三ヶ月間はそれを続けるのだった

 

          騎手の重心移動が馬の動きを作る》

 

               [騎乗者歩様の異常を知る方法(前肢)・(後肢)]

 

肢の運び(歩様)の異常は運動機能の故障を知らせる信号で、一刻でも早く発見して的確な対応が求められる極めて重要な事であるにも関わらず騎乗者の発見方法を記した書籍は皆無だわずかに良心的な馬術書が獣医学書の歩様診断の焼き直し載せているだけ(即ち、 傍観者の視点・方法で、騎乗者のではない)。 そこで、"騎乗中に発見する実践方法"をイラストを含めて記す、と次のとおり

 

         《前肢の場合

 

       前肢の異常の発見騎座を固めて、膝頭に注意力を集中する

競走馬の調教の場でも、併走した先輩や傍観する調教師などに指摘されて気付くことが多い。騎乗者自身が発見するには、経験を重ねる事が全てであり、文字などで表現するのが難しい(このために書籍に記載されない)。ここに、記した方法を実践すれば10年以上の経験をワープ※出来る筈である。

 

          後肢の場合

 

後肢の異常の発見背を真直ぐにして座骨を鞍に着け、反動の強さリズムを比較する

 

  愛馬の健康状態の把握には、真っ先に顔色を窺うことが大切気をつけて見続けると表情の変化が判り、《心の状態》が理解出来る。       それから、馬体のチェックをする事 となるが、

下肢部や蹄を調べるのに「道具は不要」だ

 

  疾走する競走馬の筋肉の中には"乳酸"などの疲労物質が次々に発生し、汗などとして 体の   外   に運び出されるが、運搬しきれずに残り蓄積したものが、

筋肉を刺激して筋肉痛や 弾性欠如を引き起こす

     <北舅笑む>

 


有力馬は芸能人と同じで周辺にマスコミの目が集り、関係者は何かと苦労する。中山競馬場勤務時に、栗東から東上した有力馬の調教を観て右肩がコズんでいると思った。その当時、久し振りの西の有力馬の出現で、東西対決に沸いていた。しかし、厩舎のストライキで延期、舞台は東京競馬場に変った。暫くして、私も開催出張となり、厩舎馬道でクーリング・ダウンをする同馬に遭った。「ああ、やっぱり」と思い「右肩が出ないョ。診て上げるから診療所に寄りなさい」と声を掛けたが厩務員は怪訝な顔をしただけで来なかったから、マスコミの目を避け他の方策を採ったと思った。翌週、ダービーに出走し左腕節の剥離骨折を発症したと聞いた。今は引退し� ��カリスマ・タレントが変則開催のJRAを非難するのを聞きながら「恐らく違和感のある反対の肩を庇ったためだナ」と合点が行き"俺の目も捨てたモンじゃないな"と思った。骨折予防が出来たかは疑問だな。中山でも「右肩を良く触ってみて」と言ってみたけど、注目されている厩務員が上の空だったし、オフィシャルな獣医師がシャシャリ出て触診するわけにもいかないから。

 

        JRA競馬学校の飼養管理教材《ホースマン第一歩》からの転載です

          従って、下見所での参考にはなりません

        <平熱だから大丈夫>

 

TC(トレーニング・センター)では"診療所"と言うと<競走馬診療所>のことで、構内の医療機関は「ヒト診療所」と呼ぶ。   子供が風邪をひいたと言うので、母親が検温させたところ38度だと言う。  傍らで聞いて居た厩務員の父親は「なんだ、平熱じゃないか!!」と言った。同じような事が「ヒト診療所」では何回もありました、と看護師さんが言ってました。

馬の体温は安静時37.8度ぐらいで2歳では38度より高いこともあります

 

馬は水を飲む時「クゴッン、ゴックン」と音をたる。                                                       この一回のゴックンと言嚥下(飲み込む)音で"                                                     一合(0.18リットル)"の水を飲み込む

                                        <旧・陸軍>

         <飼料の配合(企業秘密)>

 

競走馬を作るには"心"と同時に"丈夫な馬体"作りも大切だ。そのために、牧草作りから濃厚飼料の配合比率など経験と工夫が求められる。ある調教師が「浦河の某名門牧場の中を流れていた小川が十勝沖地震で枯れた。すると、生産馬の骨折が増えて大成出来ない。カルシウムを多給しても駄目。困った」と言っていた。研修で訪れたカルフォルニアのオールド・イングリシュ・ランチョのオーナーのジョンストン氏は「この土から名馬を作るのだ」と話しながら足踏みをした。ウインドフィ^ルズ牧場では12種類の牧草を蒔き2年に1度調査して偏らないようにしているとのこと。確かクレイボーン牧場だったと思うが、とにかく米国三大牧場の一つの"企業秘密・飼 料の配合比"が流出したので、調査したら飼料会社の従業員から漏れていたことが判った。 そこで、秘密の漏れない修道院に<飼料の配合作業>を依頼するようになったとの話を聞いたことがある。

 

  鞍着け(運動)前は、わずかに口腔(くちのなか)を"湿らす"程度に

        <侘しい話>

 

昔の陸軍では、水バケツを持ち上げて、馬に水を飲ませていたので、嚥下回数を数えさせられたとの事であった。 われわれの世代の大学馬術部には、その名残があったから同じで、水飼・給与時に喉の動きに注目して嚥下回数を数えて報告・記録した。これは、死に至る恐ろしい「疝痛」前症状で発見して対処するためである。急に飲水量の減った愛馬は、曳き運動をし、腹部の按摩(マッサージ)を実施する。秋も深まると春先に沢山いた部員も少なくなり、馬の運動量が減る。「秋の日は釣瓶落し」、直ぐ日が暮れて、暗闇の中で蹄の音だけが響くうら寂しいものだった。

       <汗の管理>

 

馬の世話をするものにとって、汗の管理は大変な作業である。①冷却効果を妨げないこと ②体温は下げても筋肉は冷やさないこと の2点が要となる。夏季は微温湯で洗浄その他の季節には無駄藁のマッサージで処理する<無駄藁>とはゴミになる無駄な部分を除去し残った軸の部分を木槌などで叩いて柔かくした藁を束ねたもの。また、汗や洗浄時の水分を取り除くのに「汗コキ」で切ると良い。外国では板ヘラなどを両手で持って切っている。 直ぐに工夫をする日本人の智恵の発露がこんなところにもある。

 

  サラブレッドに限らず、どの種類の馬でも上手に泳げるでも、潜水は出来ず

   泳法は「側対歩」で、犬の泳法"犬かき"です。

 

    ※側対歩~腰弱な競走馬が時々見せる歩法で、前・後肢の動きを一緒にして

          右・左と運歩する

 

 

          <蒙古騎兵の強さの秘密>

側対歩は西洋系馬では異常歩様だが、蒙古馬など東洋系馬では普通の走りで上下動がなく 左右に揺れるのみなので、騎射時の弓の命中率が高い。ジンギスカンやアッチラの騎兵の 強さの秘密の一つでもあった。

          <マチガイナイ>

 

初めて栗東TCに勤務した時、「馬のプール」が出来て暫くした頃。水泳調教だけで競馬に出走させる調教師が居た。成績が挙がらず厩務員が泣いているから、従前と同じに走路で調教するように説得して欲しい、と調教助手が泣く。 そこで、その調教師に聞いてみると、 某獣医職員がそう言ったからマチガイナイと固く信じている。    

水泳は側対歩でダク(速歩) の一種だから、と話しても聞く耳を持たない。某獣医職員への信仰のような信頼だった。

数ヶ月後、勝鞍が全くないから止めてしまったらしい

 

馬だって意思があるから、現状を変えたくなる?? いいえ恐怖心が先に立つので、そんな 事はありません。放馬するのは、ただ単に怖い事、恐ろしい事から逃げたいだけなのです

          <多摩川の水遊び>

 

学生時代の話。 馬術部では、騎乗を休んでも、飼付け作業があり年中無休帰省もままならない。海に山に、皆、楽しく出かける夏休みも、暑いだけの東京の一隅。 退部されたら 大変なので慰労も兼ねて多摩川まで外乗した。 鞍を脱した馬を中州に追い込んで放牧し、 川遊びを楽しんだ。 しばらくすると、遠くの京王線の鉄橋を渡る電車に驚いた一頭が川を渡って逃げ出したすると、全馬が後を追って川を越え一般道路を走り始めた。どうする事も出来ない。川崎街道を歩く馬群を見た親切な人が東京競馬場に追い込んだ。競走馬が逃げたと思ったらしい。引き取りに行くと「伝染病を持ち込んだら、どうしてくれる」と叱られた。後にTCの防疫課長になり、思い出して「むべなるかな」と思った。

 

 

 閑話休題  《"プロフェショナル・ホースマン"になる君達に贈る言葉》

 

  (競馬学校・厩務員課程の卒業昼食会で講師代表として行っていた定例の祝辞)

 

 諸君!! 卒業おめでとう。長いようで短い、短いようで長かった6ヶ月が過ぎました。次の舞台に胸を膨らませている人、もう少し真剣にやるべきだったと悔やんでいる人、いろいろある事でしょう。

君達は間もなくプロフェショナルなホースマンとして

実践の場に立つわけです。そこで、教鞭を

執った者として、また、競馬社会の先達と

して、お願いしたい事が2つあります

 まず第一に、「皆さんは物言わぬ馬の代

弁者であれ」という事です。馬は心ある

物であって、体調の悪い時とか、気分の

ら無い事が必ずある筈です。そのような

合には、今このような状態にあると愛馬に

 って主張し周知する、義務があります。

常に、馬の立場に立って発言し行動して下

さい。     2点目は、月並ですが、

感謝の心を持ち続けようと言う事です

愛馬を担当する機会を与えてくれた調教師

や馬主、あるいは乗り役(騎手)だけでなくJRAにも、また支持してくれるファン

の人達にも感謝しましょう。そして何よりもまず諸君の愛馬に感謝して下さい

この気持ちの表現方法としての要は笑顔を忘れないことです。さすれば、愛馬もハッピーこの上なしです。この"勝ち負けの社会"に20年余の経験で言いますと、奇妙な事に、有難い・有難いと言い続ける人には有難い事が、辛い・辛いを連発する人には辛い事が、次から次へとやって来て「どうだ、これも有難いか」とか「これも辛いだろう」と降り掛かって来るから不思議です。勝負の世界で生きるのですから、良循環でありたいものです。そこのところをくれぐれも宜しく御願いします。

 蛇足ながら、厩舎人との交流体験から一言、お節介をやきます。諸君は明日から「目覚まし時計の人生」を歩んでいる事をシッカリ自覚して下さい。明日から君達は単調な毎日の連続です。何時、花が咲くのか誰も解りません。しかし、時期が来れば大きく鳴る目覚まし時計のようなモノです。重賞を狙う愛馬と出会うのは、来月かも知れないし10年後かも知れません。その間は、昨日と同じ毎日の連続です。大きく花を咲かせるための地道で単調な毎日です。勿論、怠ける事も出来ます。しかし、それは時計の針を逆転させるだけの行為である事はたしかです。従って、息の長い展望のもと、ゆっくりと"重ねる努力"を楽しむ余裕が持てるように、過ごして下さい。



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